グレーの被毛と細身の身体、凛々しい顔つきはワイマラナーならではの特徴で、他の狩猟犬のアイリッシュセッター、イングリッシュセッターと比べても一目で違いが分かります。
かつては大型の狩猟犬として大活躍していましたが、現在ではドイツ国内でもペットとして飼育されることが多くなりました。
日本国内の知名度は決して有名な存在ではありませんが、実はそれなりの数、飼育されている犬の一つでもあります。
それでは、ワイマラナーという犬の特徴や歴史、性格や被毛などについて、詳しくご紹介していきましょう。
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目次
ワイマラナーってどんな犬?
とても引き締まった筋肉質な体をしており、長い脚、細くスマートな顔、とても美しく優雅な雰囲気を持った犬です。
サイズでいうと大型犬の中に入りますが、実は大型犬といっても、中型に近い大型犬。
つまり、「コンパクトな大型犬」といえます。
骨格がとてもしっかりしていること、そして均整の取れた体つきをしていること。
何より、狩猟という素早い動きに適した機能的な筋肉を備えています。
おおよそのオスの体高は、59~70cmで、メスは57~65cmです。
何といっても毛が短く寒い時期が苦手なのが姿を見るだけで一目瞭然です。
ワイマラナーの歴史
ワイマラナーの生まれはドイツです。
ワイマール地方に住んでいた、カール・アウグスト大公が猟を好きだったことにちなみ、地方名をとって名付けられました。
はっきりした起源はわからないものの、1800年代に入ってワイマラナーという犬種が認められたことはわかっています。
1890年頃になると、ワイマラナーは猟犬、そして上流階級のみが飼育できる犬として、厳重な管理のもとで繁殖されてきました。
そのようなことから、またの名を「伝説の猟犬」といいます。
1897年にはドイツ国内で、ワイマラナーを管理するための団体「ドイツワイマラナークラブ」が設立されるのですが、その結果、クラブの会員にならないとワイマラナーの売買が出来ないばかりか、その会員になることさえも困難を極めました。
いわば、ワイマラナーの海外飼育はとても困難な状態だったわけですが、1928年、ワイマラナーは初めて海を渡ることになります。
アメリカの狩猟家である、ハワード・ナイトがクラブの会員になったのをきっかけに、まずは繁殖能力のないワイマラナー2頭を譲り受け、アメリカで飼育を始めます。
これを機に、1938年にはドイツのワイマラナークラブより、ワイマラナーを譲り受け、アメリカでワイマラナークラブの管理のもと、繁殖がスタートします。
そして1942年には、正式にアメリカ・ワイマラナークラブが発足し、アメリカンケンネルクラブにも登録され、現在に至るというわけです。
では、日本にはいつ頃入ってきたのでしょう?
それは、第二次世界大戦が終わった後のことで、日本国内ではまだまだ新しい犬といえます。
ワイマラナーの性格
ワイマラナーはご主人様にはとてもよく懐く犬だと言われています。
そして、最近では世界中で家庭犬として飼育されることが多くなってきました。
注意しないといけない点は、警戒心が非常に強いため、初めて見る人には激しく吠えることがあります。
しかし、一度この人は大丈夫と認識すると、とても賢いため、吠えることはなく、しっかり言うことを聞いてくれるようになります。
そして、とても穏やかな性格のため、どんな時でも、たとえ犬が苦手な人とでも仲良く触れ合えるとても優れた犬種です。
被毛の特徴
先ほどもご紹介しましたが、ワイマラナーはとても短い毛をしています。
中には長い被毛を持っている個体もたまに存在しますが、とてもレアです。
ワイマラナーの一般的な被毛の色は、シルバーかシルバーグレーが多く、たまにホワイトの斑点が見られる場合もあります。
ワイマラナーには、短毛種のみならず、長毛種もいることは先ほどご紹介しました。
では、なぜ長毛種もごくわずかですが生まれるのでしょう?
それは、両親ともに長毛種だった場合のみに生まれる可能性があるのですが、これは本当にレアなことです。
基本はシングルコートのワイマラナーが、両親ともにロングコートの個体となると、どれほど難しいか、十分理解いただけるはずです。
また、ワイマラナーを飼育する上で、抜け毛問題はとても気になる部分だと思いますが、シングルコートのため、それほど抜け毛は多くないと言われています。
しかし、春は抜け毛が少ないワイマラナーにとっても、一番抜け毛が多くなる時期です。
春の時期は、どの犬も換毛期になります。
この換毛期とは犬の体中の毛が一様に生え変わる時期のことで、冬毛から夏用の毛へと生え変わります。
秋にも換毛期はあるのですが、こちらは夏の毛から冬の寒さに耐えうる毛になるため、それほど目立ちませんが、冬毛から夏毛に代わるときは、量を大幅に減らさなければならないため、抜け毛が多く、特に目立ちます。
大きさ
ワイマラナーは大型犬に分類されますが、サイズでみると中型犬に近いです。
体高:59~70cm
体重
オス:32~37kg
メス:25~32kg
体高こそ60cmを超える高さがありますが、体重は30kg台。
通常の大型犬とは違い、身体は筋肉質でスラっとしているため、あまり大きく見えません。
細く、筋肉までしっかり見えてしまうくらいの凛々しい姿をしています。
寿命
ワイマラナーの寿命は平均して、10~12歳だと言われています。
ですが、少しでも長生きをしてほしいと願うのが、飼い主さんの気持ち。
では、どのような点に注意をしながら、ワイマラナーを育ててあげるのが良いのでしょうか。
ワイマラナーを飼育する上での注意点をいくつかご紹介しましょう。
2、大型犬は胃捻転に注意
3、ストレス解消は長寿の秘訣
4、高齢になったら気を付けること
それでは、一項目ずつ説明していきたいと思います。
寒さに弱い
既にお話しているため、ピンと来られた方も多いと思います。
ワイマラナーはシングルコートの短毛種です。
シングルコートということは、ダブルコートの犬に比べて、毛が少ない。
つまり、寒さを防ぐための毛が生えていないことになります。
そしてそれでいて、短毛種。
人間でいえば、真冬に素肌に薄いニットを一枚着ている感覚でしょうか。
それはそれは寒いに決まっていますね。
そんなワイマラナーは、室温を20~26度に設定してあげるのがベストだと言われています。
しっかり温めてあげないと、免疫力の低下や胃腸障害などを起こしやすくなり、病気にかかってしまうこともあるので注意が必要です。
最近では、ペットショップで様々なペット用の防寒対策グッズも出ているので、それらを活用するのも有効です。
大型犬は胃捻転に注意
大型犬に起こりやすい病気の1つである胃捻転は症状が現れてから数時間で死んでしまう恐れのある、とても怖い病気です。
気づかずに放置していると、確実に命を落としてしまうと言われています。
胃捻転とは、胃の一部が何らかの拍子にねじれてしまい、その結果血流が悪くなって壊死を起こしてしまう病気で、
ねじれるときにすい臓や脾臓などの他の臓器まで巻き込んでしまうこともあり、そうなると他の臓器も一緒に壊死してしまうという恐ろしい病気です。
予防対策
予防対策としては、いくつかのポイントがあります。
・ドライフードはふやかし、一回の食事量は少なめに
・頭を下げずに食べられる位置にエサ入れを上げる
・食事後1時間は安静に
・運動後の飲み水は400㏄と決めておく
これらの対策をしつつ、症状を早期発見し、病院にすぐに連れて行ってあげることが必要です。
胃捻転の症状
胃捻転の症状について簡単にご紹介しておきます。
・吐き気があるのにもどせない
・腹部をずっと舐める、または落ち着きなく動き回る
・腹部が腫れ、触ると痛がる
・水を大量にのみ、よだれも半端なく出る
ストレス解消は長寿の秘訣
ワイマラナーは、大型犬であるとともに狩猟犬でもあります。
ですから、運動が大好きで、走ることや体を動かすことに対する欲求が特に強く、狭い場所に閉じ込められるストレスが溜まってしまいます。
特に、ワイマラナーは普段歩くペースの散歩では満足しないと言われ、ジョギングや早足、もしくは走るくらいのペースで散歩をしないと満足してくれません。
また、3日に1度はドッグランなどに連れて行き、思いっきり走ることのできる環境を整えてあげることも必要です。
ストレスの無い、穏やかな暮らしをさせてあげることも、飼育する上ではとても重要なことです。
高齢になったら気をつけること
大型犬は小型犬に比べ、老いるのがとても速いため、すでに5歳になったらシニア犬としての生活を考えていく必要があります。
特に気を付けたいのがお食事で、シニアになるとどうしても噛む力や胃腸の働きが低下していきます。
そのため、負担のない固さのドッグフードで、カロリーもシニア犬用のものを選んであげることにより、胃腸への負担を減らせるばかりではなく、適切な栄養を取ることにより肥満を防ぎ、足腰の負担も和らげます。
また、シニアに入ってからの激しい運動は、心臓やその他の臓器にも負担をかけることになるため、骨折など思わぬケガをしてしまうことにもつながります。
極端に運動量を減らすことはストレスを溜めることに直結してしまいますが、年齢相応の運動量をキープすることは、とても大切なことです。
日本での飼育頭数
日本であまり知られていないワイマラナーですが、実は飼育頭数としては決して少なくありません。
ジャパンケネルクラブの資料によると、ワイマラナーはメジャーな犬ではないにもかかわらず、一定数が飼育されていることがわかります。
過去5年間の飼育頭数をご紹介してみましょう。
2014年→166頭(49位)
2015年→175頭(48位)
2016年→193頭(48位)
2017年→163頭(51位)
2018年→220頭(43位)
引用:https://www.jkc.or.jp/modules/publicdata/index.php?content_id=21
上記のデータを見てもらえばわかるように、常に100頭以上飼育されており、しかも2018年には最高の220頭が飼育されていることがわかります。
普段の生活ではあまりお目にかかることのない種類の犬ですが、全国を見渡すと一定数飼育されており、これからますます飼育頭数が上がってくるかもしれません。
まとめ
日本ではあまりお目にかかることのないワイマラナーですが、一定数は毎年飼育されています。
ドイツで生まれ、はるばる海を渡り、アメリカへ。
そして、日本にもやってきたワイマラナー。
まだまだメジャーな犬種とまではいきませんが、地道に日本で暮らしてくれています。
そんなワイマラナーは、シングルコートの短毛種のため、室内で犬を飼育したいけれども、抜け毛が気になるという方にオススメです。
そして、なんといってもとても利口で飼い主思いの犬種のため、とても良い相棒になってくれます。
少し怖がりなところが玉に傷ですが、一度安全だと認識した人には従順な態度で接してくれるので、犬が苦手な方ともすぐに仲良くなれます。
そのような点から見ても、初めての大型犬飼育にワイマラナーを選ぶというのもアリかもしれませんね。