チベタンマスティフはその名のとおりチベット原産の犬ですが、大型犬の中でも超大型犬といわれる部類に入ります。
番犬や護衛犬、軍用犬として活躍してきたチベタンマスティフですが、その大きさと独特な風貌に数々の逸話がある犬としても有名です
今回はそんなチベタンマスティフについて、逸話も交えながらご紹介していきたいと思います。
目次
チベタンマスティフってどんな犬?
マスティフと名前のつく犬種には「イングリッシュマスティフ」、「ナポリタンマスティフ」、「ピレニアンマスティフ」などほかにも沢山いますが、チベタンマスティフはこれらの中で最も古いの犬種とされていて、これらマスティフの基礎になった親犬とされています。
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日本で闘犬として有名な土佐犬も元々は、四国犬にイングリッシュマスティフやブルドッグやテリアなどを交配させており、別名ジャパニーズマスティフとも呼ばれています。
チベタンマスティフはチベット原産の犬で、狩猟タイプと家畜番タイプがあるのですが、狩猟タイプは少し軽量で、家畜番タイプはオオカミやクマのような捕食者を追い払うために、より大きな体躯と強い攻撃性が求められてきました。
大きな体躯でがっちりとしたタイプが護衛犬としてのちに世界に広まっていき、基本的な性質は残しながら、住みついた地域の特性に合わせてそれぞれ独特の特徴を発展させています。
マスティフ系のルーツ犬ではありますが、一見ほかのマスティフとはかなり違う印象をうけ、どことなく愛嬌のある顔で見た目にはあまり恐怖心は感じさせない姿をしているのが、画像からも見て取れます。
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チベタンマスティフの歴史
チベタンマスティフの祖先と言われている「古代チベタンマスティフ」は今日見られるチベタンマスティフよりもかなり大きかったと言われ、かのマルコ・ポーロは「ロバと同じぐらいの大きさの犬」と形容したほどです。
チベタンマスティフは、中央アジアの高原地帯で誕生した後、中央アジア全域から小アジア、さらには東部ヨーロッパを経て、最終的に中部ヨーロッパまで生息地域を広げてきました。
アレキサンダー大王に同行していた戦闘犬として知られていたチベタンマスティフは、チベットからヨーロッパまで軍隊に同行して、現在の多くのマスティフの基礎として関わってきました。
チベットではとくに諸外国との交流を避けていたため、チベタンマスティフも純粋が守られましたが、1800年代になってからはイギリスの侵攻によってチベタンマスティフはヴィクトリア女王に送られ世界に広まるようになります。
ステップ地帯やヒマラヤ山麓の丘陵地帯では今でもよく見られ、羊の群れや村を勇猛果敢に守る犬として活躍している一方で、ヨーロッパではショードッグとして活躍していて、ヨーロッパ全土に定着しています。
チベタンマスティフってどんな性格?
チベタンマスティフは丈夫で頑丈で性格にムラがなく愛情深い犬ですが、感情を表に出すことはなく若干頑固な面もあります。
見知らぬ人にはよそよそしく、いざ縄張り内に侵入者があると警戒心を強めて必要に応じて攻撃的になることもあります。
飼い主には従順で、あちこち動き回ることはなく、日中のほとんどを寝そべっていますが、トレーニングを積めば家庭の護衛犬、番犬としても頼りになる存在です。
しつけの難しさ
とても賢いので物事をすぐに覚えることができます。
成犬になるまでには、3~4年かかりますがトレーニングは早いうちから厳しく根気よく行う必要があります。
根っからの護衛犬なので、特に夜間は警戒心が高まり、吠えたときの声はとても大きく、吠え声を聴けば誰でも恐れをなすほどです。
超大型犬を熟知していたり、飼育経験が豊富な場合を除き、一般の家庭犬として飼うのには不向きなところがあります。
チベタンマスティフの大きさ
体高:オス 66cm以上 メス 61cm以上
体重:65~85kg
チベタンマスティフは身高、体重ともに世界の超大型犬種でも特に大きい部類に入ります。
日本で一番馴染みのある大型犬ゴールデンレトリバーと比べると、体高こそほぼ同じ61cmですが、体重は約半分の29~34kg程度と、いかにチベタンマスティフが大きいのかが数字から見て取れます。
ちなみに、最も大きな犬種として、アイリッシュウルフハウンドが挙げられることが多々ありますが、これは体高に関しての話で、体重で見ると約48~55kgと、チベタンマスティフの方が断然、重たくなっています。
いかにも筋肉と骨量がつまったようながっしりしているのもチベタンマスティフの特徴でもあります。
それに加えて、首回りの被毛が獅子のようで大きく見え、より一層、迫力があります。
実際に、中国河南省の動物園でライオン展示の檻にこのライオンのたてがみのように首回りの被毛が豊富なチベタンマスティフを入れていたという珍事件も過去にあったほどです。
どこで購入できる?
購入は専門のブリーダーからになります。
チベタンマスティフのブリーダーは日本にはほとんどないので、大型犬専門のブリーダーに問い合わせてみるか、輸入代行しなければいけないなど、購入するのも簡単ではありません。
当然、購入価格も通常の大型犬以上の値になることが多くなっています。
一時、中国からの輸入で購入することが出来ましたが、2019年時点では難しいとされています。
子犬の価格
チベタンマスティフは稀少な犬種なため、日本で購入する場合、一番安い価格でも100万円~と言われています。
チベタンマスティフにはタイプがあり、大きくわけて首回りの被毛が豊富な獅子タイプと被毛の少ない虎タイプがあります。
獅子タイプはとくに人気が高く、過去には一頭あたり2億円もの値がついたとされています。
チベタンマスティフは、一般的な犬の発情期と周期が異なり、発情期が年に1回と少なく繁殖ペースがスムーズではないためその難しさから、どうしても高値になりやすい犬種ではあります。
過去に中国で人気
一時期、中国で人気の犬として扱われることもあったチベタンマスティフですが、これはあくまで一部に限った話。
実際のところは中国の富裕層がステータスとして飼育することが大半でした。
前述の一頭あたり2億もの価格になったというのも、そういった部分によるもので、やはりというべきか一過性のブームで終わりました。
当然、価格は暴落したのに加え、飼育にも莫大な手間がかかることで多くの個体が手放されたり、食肉にされてしまったという悲しい話も聞かれます。
こういった背景のこともあり、海外の繁殖、ブリーディング界隈も完全に下火となってしまい、現在は海外ブリーダーからの購入もままならない状況となっています。
一般的に一頭あたり100万とされている価格も2019年現在ではさらに高額になっている可能性もあります。
まとめ
チベタンマスティフはその風貌と大きさから、数億円という値がつくほどの珍しい犬種です。
獅子タイプのボリュームの豊富さによっては、本物のライオンにも見えてしまうその大きさには圧巻です。
日本ではほとんど見かける犬種ではないですし、日本の住宅事情ではなかなか飼えない犬種ですが、ヨーロッパではドッグショーなので活躍しているようなので、いつか生で見てみたい犬種でもありますね。