日本の犬というと、まず柴犬、次に秋田犬の名前が挙がることが多いですが、この四国犬はマイナーではありますが、日本国内で古くから人々と生活を共にしてきました。
今回はそんな四国犬の特徴や歴史について紹介していきたいと思います。
四国犬ってどんな犬?
四国犬は日本原産の犬の中でもっとも素朴な風貌と評されており、一目、見た印象としては大きな柴犬といったところでしょうか。
そんな四国犬は四国地方原産の犬で山地周辺の山村で猪や鹿などの狩猟を行い、古くから人との繋がりを持ち、生活を共にしてきました。
四国犬は1937年に天然記念物に登録されており、高知の土着犬ということで当初は「土佐犬」と登録されていましたが、「土佐闘犬」と混同しないようにという理由で、後になって「四国犬」と改名されました。
天然記念物というと一般の人からすると敷居が高いイメージがありますが、これは日本犬を残すためであって一般家庭で飼うのには全く問題はありません。
近年では2019年に26頭、2018年に20頭、2017年に23頭と、毎年安定して登録されており、決してメジャーではありませんが、かといって特段、珍しい犬ではないといったところです。
なお、飼育されている四国犬の大半は地方や郊外で飼われているのですが、これは豊富な運動量が必要であるということ、人がひしめき合っている都心部での飼育が適していないというのが主な理由でもあります。
四国犬の歴史
古くから四国山地に存在していた土着犬で、高知の山岳地帯に生息していた「ヤマイヌ」と呼ばれていた野良犬が祖先ではないかと考えられています。
そして、そのヤマイヌを飼いならして猟犬として飼育するようになったのが四国犬のはじまりです。
古くから山岳地帯で生息していたこともあって、足腰が強く運動能力が優れており、その優れた運動能力を生かすための繁殖が長らく繰り返され、猪や鹿、熊さえも追い払う優秀な猟犬となっていきました。
自分のボスと認識している人以外の指示は聞かなかったり、時に好戦的になってしまうのは、この時の名残でもあります。
ただ、猟犬としての役割をほぼ終えてしまった現代の四国犬は以前の個体と比べると、性質は穏やかになり、飼いやすくなったとされています。
四国犬は本川系、播多系の大きく2つのタイプに分かれており、独自の特徴がありましたが、現在は多く地域で猟犬の役割を担っていないのに加え、全体の頭数が減少傾向である、両タイプの交配が進んだことで、地域特性は薄れ、単純に四国犬として扱われています。
四国犬の祖先犬である「ヤマイヌ」はニホンオオカミの血を引いているとも言われています。
2000年には絶滅したはずのニホンオオカミの目撃情報が出て話題になりましたが、この時の正体は四国犬。
僅かながらも血の繋がりのある四国犬と間違えられたのも無理はありません。
四国犬の性格
四国犬の性格は飼い主に対して非常に忠実で従順です。
これは猟犬として生活してきた名残があり、ペットとして飼われるようになった現代にも引き継がれています。
しかし、他の人に対してはなかなか心を許さず、警戒心が強い傾向があります。
時に散歩中などに他の人が近づいて来ると吠えたり攻撃的になったり、狩猟犬として活躍していた頃の本能で、散歩中に鳥や猫などを見ると走って追いかけることがあります。
このような場合は、日頃のしつけで矯正したり、子犬の頃に多くの人と触れ合わせることで成犬になった時の攻撃性は抑えることができます。
成犬となった時に、どのような性格になるかは子犬の頃からの接し方で大きく変わりますし、飼い主がきちんとコントロールしてあげられるかが重要になってきます。
また、普段は大人しい四国犬ですが、いったん動き出すと軽快に動き、飼い主と遊ぶのが大好きです。
家にいる時のスキンシップ、毎日の散歩、時にリードを放して自由に走り回らせてあげることで、飼い主との関係が良くなっていきます。
四国犬の飼育・しつけは難しい?
四国犬は基本的に頑固で気難しい一面を持っており、飼育やしつけは難しい部類に入ります。
とにかく子犬の頃からのしっかりとしたしつけが重要になります。
また、飼い主以外の人に対して強い警戒心を抱いてしまうので、子犬のうちにできるだけ多くの人と接する機会を作り、対人環境に慣れさせることが必要になります。
加えて、飼い主の方が立場が上であると認識させるための接し方も重要になってきます。
愛玩犬などは対等な立場で接しても大きな問題になりませんが、四国犬のような元猟犬を飼うとなると、この辺りを徹底させる必要があります。
こういった難しさは柴犬も同じなのですが、身体が大きな四国犬は、しつけが行き届いていないと、もしもの時に大きなトラブルに繋がりかねません。
しつけに関する知識を持っている方がリーダーとなり、正しい知識で世話、しつけが出来るかが飼育のポイントとなるでしょう。
とはいえ、元々は猟犬で飼い主に忠実、それでいて賢い犬でもあるので、子犬の時に可愛いからと甘やかすのではなく、主従関係を築くことができれば、生涯の大切なパートナーとなってくれます。
柴犬との違いは
現在、日本犬は6種類(柴犬・北海道犬・秋田犬・四国犬・紀州犬・甲斐犬)が登録されているのですが、四国犬はこれらの中では秋田犬に次ぐ大きさの犬種になります。
関連記事:日本犬は6種類!性格、寿命、しつけ方法に違いはある?
四国犬は、日本犬の中の一つですが知名度が低く、同じ日本犬の柴犬に比べるとあまり知られていません。
(四国地方以外の地域では特に顕著)
毛色のバリエーションや顔つきが似ていることもあって、「同じような犬」と思われがちですが、両者は全く別の犬種です。
まず、一番の違いは大きさです。
体高:35~41cm
体重:8~11kg
体高:43~55cm
体重:14~25kg
このように単純な大きさで比較しても、四国犬の方が一回り大きく、身体つきも筋肉質で引き締まっています。
次に顔つきも見てみましょう。
顔つきも、四国犬は細くシャープな顔つきであるのに対し、柴犬は少し丸い顔をしています。
※現在はタヌキのような丸い顔つきの柴犬(信州柴犬)が一般的になったことで、顔を見ただけで四国犬と容易に区別できるようになりました。
性格は四国犬も柴犬も飼い主に従順で、それ以外の人に対しては警戒心が強い点は似ていますが、猟犬である四国犬の方が柴犬よりも闘争心が強く、攻撃的な面を持ち合わせています。
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被毛の特徴
四国犬の被毛の色は「胡麻」「黒褐色」「赤」の3色、中でも胡麻が最も多い傾向にあります。
一般的な柴犬と同じですね。
その被毛は、ダブルコートと呼ばれ、硬くて直毛のオーバーコートと柔らかく密集したアンダーコートの2層に分かれているのが特徴で、毛質は固く、触るとチクチクとした印象があります。
春と秋の換毛期には、アンダーコートが大量に抜け落ちるため、短毛ではありますが抜け毛の量は多い方です。
四国犬は、短毛なのであまりお手入れがいらないようなイメージがありますが、抜け毛が多いので週に2、3回、定期的にブラッシングを行い、抜け毛をきちんと取り除いてあげる必要があります。
この被毛の色や質感、さらには抜け毛に関しては柴犬と四国犬に目立った違いはないとされています。
まとめ
我が国の天然記念物にも登録されている四国犬。
古くから根強い人気の柴犬と比べると、知名度は低く飼育頭数も少ないですが、毎年、一定の頭数が新たに飼われています。
しつけをしっかりしていないと、問題行動を起こしたり、時に攻撃的な一面が見られることがありますが、正しい方法でしつけていれば、問題なく飼うことができます。
柴犬や秋田犬に注目が集まりがちですが、四国犬も同じように魅力があるというのをお伝えして、締めくくりたいと思います。