猫というのは自分の名前をどこまで認識しているのでしょうか。
犬は名前を呼ぶと反応したり、振り向いて駆け寄ってきたりしますよね。
これは自分の名前を認識している証でもあるわけですが、では、猫はというと?
そんな疑問を解くべく、上智大学の総合科学部心理学科の研究チームがある実験を行いました。
実験内容は、猫は自分の名前をどこまで聞き分けることができるかというもの。
一般家庭の猫とネコカフェなどで多頭飼いされている猫を対象に行われました。
猫の習性、それから聴覚や視覚などにアプローチした様々な実験を行い、データ検証をした結果、猫は自分の名前を認識し、さらには、同居する他の猫の名前ともしっかりと聞き分けているということが分かりました。
(ネコカフェにいる猫については、自分の名前と同居猫の名前を区別しているというデータは示されませんでした)
参照:ネコは自分の名前を聞き分ける~ヒトの発する「自分の名前」と「他の名詞」や「同居ネコの名前」を区別する能力を実験的に証明~
これは、私たちのような猫を飼っている人にとっては、非常に興味深いことですよね!
そうと分かれば愛猫に自分の名前をしっかりと認識してもらい、さらなるコミュニケーションを取ってもらおう!
ということで、今回の記事では猫に名前を覚えてもらう方法と、その際にしてはいけないことなどを紹介したいと思います。
目次
猫は音に敏感に反応します
猫の聴覚は五感の中でも最も優れているといわれます。
いつもの音や声をよく覚えていて、敏感に反応します。
掃除機や怒鳴り声がすると、びっくりしてしまうことってありませんか?
猫というのは、大きい音や低い声を好まない傾向があるのですが、この理由は、大きな獣を予想してしまうからですね。
逆に高くて囁くような音や声を好みます。
なので名前を呼ぶ際は、高くて優しい声で呼びかけてあげるのがいいでしょう。
そうすることで心地よいと感じてくれます。
また、詳しくはのちほど紹介していますが、いくら音に反応するとはいえど、あまりに名前が長いとBGMみたいに聞き流してしまうところがあります。
短い方がよく反応してくれるでしょう。
猫が名前を認識するには時間がかかる?
猫が自分の名前を覚えてくれるまでの期間はどうでしょう。
こちらについては、猫とコミュニケーションを取る時間も大切な要素ですが、接し方(訓練としてのコミュニケーション)や、本来の性格によって違いが大きく出てきます。
一つの例として、友人宅に『レイ』、『リキ』という名前の猫ちゃんがいるのですが、レイちゃんが二ヵ月かかったのに対し、リキちゃんは二週間程度で名前を認識して返事をしてくれました。
また、1匹で飼っているのと多頭で飼っているの場合ではどうでしょう。
結果として、多頭飼い、それも頭数が多くなるにつれて、名前を認識するまでに時間がかかる傾向があります。
ちなみに我が家にも2匹の猫がいますが、名前をきちんと聞き分けてそれぞれ返事をしてくれます。
名前は『小五郎』と『桃』なのですが、小五郎は長いので『ゴロ』と略すことが多いのですが、小五郎でも、ゴロでもきちんと聞き分けますし、ゴロと呼んでもモモは返事をしません。
また、モモに向かってゴロと呼んでも返事をすることはありません。
名前を覚えさせる方法
猫に自分の名前を覚えさせるポイントは4つ。
2.目を見て名前を呼ぶ
3.褒める
4.叱る時は名前を呼ばない
それでは順に見ていきましょう。
名前はわかりやすいものにする
猫にとってわかりやすい名前とは、言い換えると、聞き取りやすい名前ということです。
当然、長いより短い方が聞き取りやすいですから。
理想は2~3文字程度で、飼い主が呼びやすい名前ならば更に良さそうです。
多頭飼いの場合は、他の猫との区別がしやすい名前がふさわしいということも分かりますね!
兄弟や似た者同士であれば、『アンナ』と『ハンナ』のような双子のような名前を付けたいところですが、聞き取りやすさという面では決して良いとは言えません。
また、猫は濁点があると聞き取りやすいといわれています。
我が家の猫、ゴロとモモは、どちらも自分の名前を良く認識しています。
聞き分けやすさという意味で、濁点は大きな要素になっているのかもしれませんね。
関連記事:猫の名前に悩むあなたへ~名付け、ネーミングのポイントをペットショップで働く私が解説します
名前は目を見て呼ぶ
猫というのは視力はあまり良くないとされていますが、とにかく人の顔をよく見ています。
ドアを開けたら振り向く、名前を呼んだら視線を向ける、呼んでもいないのに飼い主の目を見て擦り寄ってきたり。
私たち飼い主も名前を呼ぶ時にしっかり目を見て応えてあげることで、名前を認識してもらいやすくなりますし、猫とのコミュニケーションにもなります。
他にも、猫が飼い主に視線を向けたときに名前を呼んであげるのも良いですね!
2匹以上の場合は、猫が混乱しないように、違う名前で反応しても無視をするのも大切です。
多頭飼いにおいては、名前を認識させる大きなポイントになるでしょう。
とにかく誉める
誉められたら誰でも嬉しいですよね!
小さい子を褒めてあげたら、嬉しくて何回も同じことをし始めるのを見たことはないでしょうか?
誉められたら嬉しい、それは人間も猫も同じ!
名前を呼んで返事をする、振り向くなどの反応を示したときはとにかく誉めてあげることが大切です。
更には、猫にとって嬉しいことをしてあげるのも効果大でしょう。
例えば、撫でてあげる、餌をあげる、おもちゃで遊んであげるとかは、全ての猫ちゃんにとって嬉しいでしょう。
名前を呼んで、返事をしたら誉めることを何回も繰り返すうちに、名前を呼ばれて返事をしたらいいことがあると認識して、返事をするようになるでしょう。
猫を叱るときは名前を呼ばない
これは猫が混乱するのを防ぐために抑えておきたいことです。
叱るときは、猫が嫌がる低い声で大きな音を立てるのが定石です。
よくやるのが、新聞紙などを丸めて、床を思い切り叩いて大声でコラ!と叫ぶのですが、そんな時、名前を呼ばれたらどうでしょうか?
あれ?さっきは誉められたのに、どうして名前を呼ばれたのに叱られるのかな?と混乱してしまったり、名前を呼ぶ=叱られると認識してしまうかもしれません。
そうなると、名前を呼ぶと隠れたり、怯えるような素振りをしてしまいかねません。
誉めるときは名前を呼ぶ、叱るときは名前を呼ばないというのを徹底して訓練していくことも、名前を認識させるのに重要なポイントになってくるでしょう。
猫が名前を認識すると、どんな反応をする?
次に猫が名前を認識した時の反応や行動について見ていきましょう。
猫が名前を認識した時の反応は、認識の度合いによって段階的に変わってきます。
また、個体によって反応が起こるまでの期間や段階の多さも違っていて、ずっと同じ反応しか示さない猫もいれば、ゆっくり時間をかけて明確な反応を示すようになってきた猫もいます。
逆に短期間でしっかりとした反応を示すようになった猫もいるなど、本当にそれぞれですが、実際に猫を飼っていると、大半の子が下記のような反応を段階的に取ってくれました。
驚き、目をこちらに向ける
1匹でも多頭飼いでも、飼い始めてすぐの頃はどんな音にも反応して、びっくりした表情でこちらを見ます。
多頭飼いだと特に顕著で、ドアを開けたら一斉にこちらを見て警戒します。
1匹だと、名前を呼ぶと、ハッと驚いた表情でこちらを見るため、名前を認識したと勘違いしてしまいがちですが、この段階は単なる驚きや警戒の反応だと言えます。
尻尾をパタンパタンとする
尻尾をパタンパタンとするのは、イライラしている時の反応だと言われています。
しかし、見方を変えると、いつも同じ言葉でうるさいなあと思っていて、この反応を示すのかもしれません。
名前=いつも同じ言葉だと認識しているとすれば、第一歩目の反応だとも言えます。
無反応な期間
名前を呼んでも無視される、という飼い主は多いと思います。
うちの子もたまに無視しますが、飼い主の声だと認識して、安心するから無反応なのです。
呼ばれているのが自分の名前=安心できる言葉として認識している段階の反応とも言えます。
耳がピクリと動く
耳がピクリと動くのは、猫が音を判別したとても重要なサインです。
「飼い主の声だ」「いつもの言葉だ」、「自分のことかな?」と認識している可能性がとても高いです。
飼い主の方をじっと見ながら耳をピクリとさせていたらほぼ間違い無いと思われます。
ヒゲがピンとなる
ヒゲがピンとなるのは、興味津々なことを表しています。
猫じゃらしを見せたら、ヒゲかピンとなるのと同じです。
名前を呼んで、ヒゲがピンとなってこっちをじっと見ていたら、猫が名前を認識している可能性がとても高いでしょう。
後ろから呼んだら振り向く
後ろから名前を呼んで振り向いたのなら、ほぼ、猫が自分の名前を認識していると思って間違いないと思われます。
その時の表情が、目をクリクリさせてヒゲがピンとなって、耳が前をしっかり向いていたら、間違いなく名前を認識していると判断して良いでしょう。
こちらをみて鳴いて反応する
こちらを見て鳴くのは、人間と同じ、まぎれもない返事です。
猫が名前を認識したことを決定づけできる反応だと言えます。
その時に猫が甲高くニャーと言うのも特徴です。
駆け寄ってくる
名前を呼んで駆け寄ってくるのは、名前を認識している決定的な反応です。
猫は、嬉しくて仕方ないので、駆け寄ってスリスリさたり頭突きしたりしてくるでしょう。
また、その場でパタンと横になったりお腹を見せることもあります。猫にとって最大級の愛情表現や、服従のポーズを見せることもあります。
まとめ
猫の認識能力については長らく知られていませんでしたが、上智大学の研究によって、しっかりと認識していることが証明されました。
それも、なんとなく覚えているだけでなく、呼びかけに反応し、さらには行動で示してくれるわけですから。
飼い主としては喜ばしいことですよね。
名前を認識するまで、ある程度の時間がかかってしまうかもしれませんが、今回、紹介した方法によってスムーズに覚えてくれるはずです。
冒頭にも挙げた通り、個体差がとてもあるので、飼い猫に無視をされたり殆ど反応がなかったとしても、猫は心の中で返事をしているかも知れないので、決して気を落とす必要はありません。
猫は元々は野生動物、小さな肉食動物でもあります。
人間と共に暮らして数千年という犬と比べると飼い猫の歴史もまだまだ浅いです。
すぐに上手くいかなくても、毎日、コミュニケーションの一環として行ってみてください。
自然と名前を覚え、飼い主であるあなたの呼びかけにも、しっかりと応えてくれるはずですから。