マスティフと聞くと犬好きな人でも、獰猛で大型な闘犬を想像する方は多いと思います。
一言でマスティフと言っても、様々な国や地域で品種改良されているため、その原産国や種類も性質も様々です。
また、最近では攻撃的な性質も改善されて、ペットとして飼う家庭も増えてきています。とはいえ、まだまだ闘犬としてのイメージが強いマスティフ。
今回は、そんなマスティフについて紹介させていただきます。
目次
マスティフとはどんな犬?
マスティフとは主に番犬として飼育されてきた一つの犬種群。
実際にマスティフという犬種は存在せず、派生するような形で多くの犬種に分類され、中国やヨーロッパで、それぞれ別の品種として改良されてきた背景があります。
誕生したのが紀元前であるのに加え、様々な地域で飼育されてきた説が残っているため、正確なルーツは分かっていません。
※最も有力視されているのが紀元前700年のバビロニア発祥説ですが、他にもエジプト、中国で誕生したという説もあります。
下記でも紹介している通り、様々な種類に分かれているマスティフですが、犬種としての特徴は共通しており、大型でがっしりとした筋肉質の体型をしています。
基本的には賢く飼い主にたいして忠誠心が強い犬種ですが、元々は番犬や闘犬として飼われていたことから、雄は攻撃性が強い傾向があります。
※飼育するにはしっかりとした管理体制が必要とされてきました。
なお、闘犬が禁止されている現代においては、その強い攻撃性は不要という論調もあり、近年は大人しく友好的に改善されています。
とはいえ、決して飼育しやすい犬ではなく、特に国内で目にする機会はほとんどありません。
平均寿命は他の大型犬同様6~11才とやや短く、品種によっては絶滅が危惧されているものもいます。
チベタンマスティフ
チベタンマスティフはその名前の通り、中国のチベット高原を原産地としています。
もともと牧羊犬や番犬として遊牧民族と生活していました。
その体格は、他の犬種と比べてもかなり骨太大柄で、体高66㎝、体重は65~85㎏、中には100㎏を超える個体もいる超大型犬です。
飼い主にたいして強い忠誠心を持つ性格ですが、敵とみなすものには攻撃的で物おじせず、どんなものにも勇猛果敢にたちむかっていきます。
軍用犬としての歴史も古く、モンゴルの初代皇帝チンギス・ハーンは3万匹のチベタンマスティフを引き連れて遠征したという有名な話もあります。
19世紀頃、中国国内でその数は激減しますが、ヨーロッパやアメリカに輸出された個体をもとに、計画的繁殖が行われ頭数を増やしていきます。
しかし、メスの繁殖期が年に一回と少なく繁殖に時間がかかるため、現在でも世界で200頭に満たない超希少犬とされています。
少し前にはライオンのようなたてがみと剛健な見た目が中国の富裕層の間で人気を博し、その取引価格は1億以上、中には2億円で売買されたチベタンマスティフもいるほど。
当時は世界一高価な犬といわれていましたが、現在はブームは過ぎ去り、価格は暴落しています。
関連記事:チベタンマスティフはどれだけ大きい?子犬の価格、性格、産出の歴史、しつけは難しい?
関連記事:チベタンマスティフは日本で飼うのは難しい?飼育のためにクリアすべき4つのポイント
イングリッシュマスティフ
イングリッシュマスティフは、イギリスが原産国で、もともと果樹園や邸宅を守る番犬として飼育されていました。
マスティフグループの中では最も知名度が高いため単に「マスティフ」と呼ばれることもあります。
骨格ががっしりしていて、前脚はまっすぐで太く、後ろ脚は筋骨たくましいです。体高は約70~75cm以上、体重は約77~85kg以上の超大型犬です。
たれ耳で顔にはブラックマスクがはいり、皮膚のたるみから顔には皺がよっていて、困り顔にも見える愛嬌ある顔立ちが特徴的です。
性格は温厚でとても賢く、時に勇敢で忍耐力、警戒心も強く番犬として非常に優秀です。
一方で主人や家族には友好的な甘えん坊な一面ももちあわせています。
関連記事:飼育は危険?イングリッシュマスティフってどんな犬?性格、大きさ、価格は?
ボルドーマスティフ
ボルドーマスティフはフランス原産のマスティフ種です。
別名、フレンチマスティフとも呼ばれる彼らは14世紀頃から放牧犬として人々と関わりを持ち、18世紀に入ってからは家庭犬として飼育されるようになります。
穏やかな性格とされることもありますが、闘犬として扱われてきた歴史も長いため、しつけは慎重に行う必要があります。
なお、知名度こそ高くないものの、日本で2番目に飼われているマスティフ犬で、一部で強い人気があるという表現がしっくりきます。
関連記事:ボルドーマスティフのすべて~見た目の特徴から性格やしつけ、日本での飼育頭数は?
ナポリタンマスティフ
ナポリタンマスティフはイタリアが原産国で、もともと闘犬として飼育されていました。
闘犬が禁止されてからは、番犬や警察犬、またショードッグやペットとしても注目されています。
大きな体とのど元までたるんだ皮膚が特徴的で、非常に強面なため「世界一怖い顔の犬」というキャッチフレーズがついてしまうほどです。
体高は60~70㎝、体重は50~70㎏と他のマスティフ種と比べると、少し小さい印象です。
見た目は強面ですが、性格は温厚で飼い主に忠実で、運動をあまり好まず横になっていることがほとんどです。
しかし、いざというときは闘犬時代の俊敏さもみせてくれます。
また、一度の出産で沢山の子を産むという特徴もあり、一度に24頭産んだナポリタンマスティフのギネス記録もあるほどです。
映画ハリーポッターに出演したことで話題にもなりました。
ブルマスティフ
ブルマスティフは、1800年代にイギリスを原産国として誕生したマスティフ犬種です。
マスティフは勇敢さと警戒心をもちあわせ番犬としては優秀でしたが、俊敏さと闘争心がたりないということから、ブルドックとの交配によって足りない部分をおぎなう犬種として誕生したのがブルマスティフです。
体高は60~69㎝、体重は45~69㎏の大型犬です。
その見た目は割合的にブルドック4:マスティフ6で、顔はブルドック要素が強いですが、体格は骨太で筋肉質のひきしまったマスティフらしい体格をしています。
ブルドックに似た見た目は少々怖いですが、その性格は無邪気で温厚、飼い主や家族をとても大切にし、小さい子供の子守も任せられるほどです。
日本にもブリーダーはおり、一時期は日本でも飼育頭数が増えた時期もありました。
関連記事:ブルマスティフは見た目とのギャップが最大の魅力~実際の性格、価格、飼育は難しい?
ジャパニーズマスティフ
ジャパニーズマスティフは土佐闘犬の別名です。
土佐闘犬は日本で闘犬が盛んだった江戸後期から明治にかけて四国犬にイングリッシュマスティフ、ブルドック、ブルテリア、グレードデーンをかけあわせ、耐久力と闘争心のある闘技犬として品種改良されました。
土佐闘犬は省略して土佐犬と呼ばれることが多いですが、実際、土佐犬といえば四国犬のことを指しており、両者は全く異なる犬種でもあります。
土佐犬と土佐闘犬を完全に区別するため、土佐犬は四国犬と呼ばれるようになりました。
すごく体の大きいイメージの土佐闘犬ですが、様々な犬種との交配により、その体高、体重にはばらつきがあります。
体重は35㎏前後から個体によっては100㎏を超えたりと様々です。
闘犬としての性質上、イギリス・フランス・ドイツでは飼育規制がある国もあり、日本では一部の自治体によって規制もあります。
それだけ獰猛なイメージが強い土佐闘犬ですが、基本的には穏やかで忍耐力をもちあわせています。
飼い主や信頼をよせるものに対してはとても強い忠誠心もち、甘えん坊な一面もあるかわいらしい性格をしています。
アフガンマスティフ
アフガンマスティフは、その名のとおりアフガニスタンを原産国として誕生し、主に番犬、闘犬として使われてきました。
1979年のアフガン戦争の際、その数は激減したと言われています。
村どうしのもめごとなど、アフガンマスティフの雄同士を闘わせ、勝ったほうの意見を通すなどのやり取りにも使われてきました。
現在、アフガニスタンの政治的な情勢などもあり絶滅の危機にいます。
基本的にはアフガニスタンのみで飼育されていましたが、現在はインドやパキスタンでも分散飼育され守られています。
スパニッシュマスティフ
スパニッシュマスティフはスペインを原産国として、主に家畜をオオカミや泥棒から守るための護衛犬として飼われていました。
戦争により一時その頭数は激減してしまいますが、愛好家により保護されその頭数を増やし絶滅は免れます。
現在はスペインの国犬としても登録され、スペインでは非常に人気の高い犬種でもあります。
体高70~80㎝、体重55~90㎏を超えるものもいる超大型犬です。
非常に優しい性格ですが、家族などに危機が及ぶとしっかり守る本能もかねそなえています。
ベルジアンマスティフ
ベルギーを原産国として誕生したマスティフですが、いつ頃どのように誕生したかは詳細は不明で謎が多い犬種です。
力は強いですが、攻撃的な性質をもたないマスティフと言われています。
もともとは番犬として飼われていましたが、非常に力が強いことからその特性を生かし、牛乳をつんだ荷車を引く仕事を任されていました。
しかし、20世紀に入ってからは重い荷車を犬にひかせる等の行為は虐待だと禁止令がでたため、その仕事を失ってしまいます。
また、2度の世界大戦のさなかに頭数が激減し、現在ではベルジアンマスティフはほぼ絶滅していると言われていますが、実際のところは僅かながら存在している可能性も高いといわれています。
まとめ
近年でこそ、性質も穏やかになったマスティフですが、もともとは闘犬としてつくられたことから、何か刺激を受けると攻撃的な闘犬としての本能が暴走してしまうこともあります。
非常に力も強く、飼育は決して初心者向きとは言えません。
時に、飼い主のしつけの失敗や管理不足により人や他の動物を襲ったりといった事故もありますが、それらはマスティフ自身が悪いのではなく、人間の管理不足がまねいた結果です。
子犬の頃からどんな興奮状態でも飼い主の指示はしっかり守るようしつけ、他人や他の動物との社会性を身に着けさせてあげましょう。
また、万が一にそなえて散歩の際は口輪をつけてあげることも大切です。
マスティフ本来の性質と特徴を理解してコントロールしてあげれば、最良で最強のパートナーになりうるのです。