今回は、猫に関わる遺伝性疾患について紹介します。
愛猫にはいつまでも元気で傍にいて欲しいものですね。
これは全ての飼い主の願いでもあるわけですが、生き物である以上、病気のリスクはありますし、特に純品種の猫にとって怖いのが遺伝性疾患です。
遺伝性疾患をはじめ、猫の病気はなかなか早期発見が難しく、気付いた時には遅かったという悲しい話も度々、聞かれます。
そういった事がないよう、猫種別で気を付けたい遺伝性疾患について頭に入れておきましょう。
そうすることで、もしもの時も迅速に対処することができるはずです。
目次
遺伝性疾患とは?
遺伝性疾患とは生まれ持っての体質や遺伝により発症する病気です。
親猫や祖父母、さらに前の世代からの遺伝により症状が現れ、発症は生後すぐの場合もあれば、シニアになってから発症するケースもあります。
また、同じ兄弟、親子でも症状の程度や有無、発症のタイミングは異なります。
遺伝性疾患の中には日常生活に支障をきたす症状もありますが、事前に症状や対処法を知っておくことで愛猫のケアやサポートを充実させることも出来ます。
猫種と遺伝性疾患の関係
遺伝性疾患は親世代に限らず数世代前から、さらにさかのぼること数十年前の血統からつながる遺伝が原因です。
純血種の猫の中には、特定の疾患の発症率が他猫に比べ突出して高い猫種がいるのですが、この背景には特別な特徴や毛色、サイズなどを持つ猫を計画的に輩出する過程で誤った交配や血統の混合が行われていた歴史が深く関係しています。
特定の特徴をより強くさらには数世代にわたり受け継がせるには時に劣性遺伝と呼ばれる自然界の摂理に反した交配も施されていました。
あらゆる動物はより確実に安全に生き抜き、種の保存を図るために優性遺伝を繰り返すのですが、これは優れた遺伝子を優先して受け継ぐことで世代を重ねるたびにより優れた個体になるためです。
この優性遺伝の法則に最も近いのは雑種の猫です。
親猫の優れた遺伝子を優先して受け継ぎ、誕生した子猫は親世代や祖先に比べ様々な面でに改良されているということです。
雑種の猫が身体が丈夫とされている大きな要因でもあります。
それでは純品種の猫とリスクが高い遺伝性疾患について見ていきましょう。
マンチカン
マンチカンがかかりやすい遺伝疾患名:椎間板ヘルニア、外耳炎、変形性関節症、漏斗胸(ろうときょう)
胴長短足と丸顔、大きな瞳と可愛い要素が盛りだくさんのマンチカンですが、実は数々の先天性疾患のリスクを抱えています。
マンチカンは純血種として血統が登録されるまでの過程でかわいそうな猫と呼ばれた時期もあったほどに猫本来の骨格や俊敏性、身体的機能に反しています。
つまり胴長短足のマンチカンを作りだすために、あえて本来の遺伝的様子を損なう繁殖が施されていたためです。
ただ様々なリスクや課題があると知ってはいても、魅力が沢山あることには変わりないですし、マンチカンを家族に迎えたいという方は当然いるでしょう。
マンチカンを家族に迎える時は、将来愛猫が抱える不調や健康リスクを事前に把握し、日ごろの健康管理や体重管理に取り組んでゆきましょう。
アメリカンショートヘアー
遺伝疾患名:尿管結石
ワイルドな見た目と野性味の残るやんちゃな性格が魅力のアメリカンショートヘアーも実は先天性疾患のリスクを抱えています。
一見、野生種そのままにも見えるアメリカンショートヘアーも計画的に輩出された純血種の猫だからです。
アメリカンショートヘアーに多く発症しがちな先天性疾患は尿管結石です。
オシッコを排出するための管の中に結石ができてしまい排尿の都度痛みや出血を伴います。
適切な治療で一時的に症状は改善されるものの再発を繰り返すことも多々あります。
スコティッシュフォールド
遺伝疾患名:外耳炎、骨軟骨異形成症
垂れた耳を丸顔、甘えん坊な性格で純血種の猫の中でもダントツの人気を誇るスコティッシュフォールド。
ただ、この垂れた耳は人為的に遺伝するよう施された過程があり、日常生活では通気性の悪さからたびたび外耳炎の発症を繰り返します。
またスコティッシュフォールドは軟骨の形成に遺伝的な問題を抱える場合が多く成長と共に骨格のトラブルが目立つこともあります。
日常生活でどのような点に注意すべきかや猫か発する痛みのサインをいち早く察知するために、愛猫の体質や遺伝的な特性を早々に把握しておくと安心です。
ロシアンブルー
遺伝疾患名:糖尿病、尿管結石、眼病
美しい毛色とビロードのような手触りを持つロシアンブルーは毛色や透き通った瞳からもわかるように他猫とはまるで異なる特徴をもっています。
その魅力ゆえに遺伝性疾患も多く、その多くは原因不明といわれています。
遺伝性疾患の多くは体内で徐々に症状が進行するので、早期発見、早期対処が必須となります。
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ノルウェージャン・フォレスト・キャット
遺伝疾患名:椎間板ヘルニア、心臓病
世界最大の猫といわれるノルウェージャン・フォレスト・キャットは本来は北欧の山奥で暮らす猫です。
そのため日本の高温多湿な気候や室内でののんびりした生活がこの猫の特性に合致しているとは言えません。
運動不足から肥満になり足腰や心臓に負荷がかかることも少なくありません。
大型猫ならではの遺伝性疾患と生活環境が合いまって病気発症のリスクが高まるので、愛猫の健康や体質は詳しく把握しておくと安心です。
ラグドール
遺伝疾患名:肥大型心筋症、椎間板ヘルニア
名前の通りにぬいぐるみのように大人しく温厚といわれるラグドールも計画的に輩出された猫の一種です。
この猫の歴史は大変古く遺伝性疾患の由来もはるか以前にさかのぼります。
大型猫故に肥満は健康に大きなリスクをもたらし心臓への負荷も増大します。
先天的に心臓へのケアが欠かせない猫種であることをしっかりと受け止めておきましょう。
遺伝性疾患を発症する年齢
遺伝性疾患と呼ばれる症状は多岐にわたります。
そのため、発症のタイミングや症状の程度も親猫、兄弟猫で差異があり、必ずしもすべての猫が発症するわけではありません。
例えば、マンチカンでリスクが高い椎間板ヘルニアだと8~10歳から発症することが多いですが、尿管結石だと6歳ぐらいから発症するとされています。
加えて、個体ごとでも発症年齢は異なります。
一概に何歳から気を付けなければならないか分からないというのも遺伝性疾患の怖さといえます。
遺伝性疾患への対策
残念ながら動物への医療はまだまだ対処療法が中心です。
辛い症状が現れてからその症状ごとに対処法を試行錯誤しながら繰り返し行われ、大半の症状は完治が難しく、不調を一時的に軽減するにとどまっています。
一旦発症してしまった先天性疾患を完治させることはできませんが、発症のタイミングを遅らせることやもし発症をしても症状を軽く抑えるための努力なら日ごろから家族がしてあげられるはずです。
また、愛猫に遺伝性疾患の可能性があるかどうかをあらかじめ知っておくことで日常生活のケアやサポートをより適切なものにすることはできます。
例えば、椎間板ヘルニアは生後1年未満ではほぼ確定診断は下りないですし、日常生活で飼育家族がその症状に気がつくことはないでしょう。
3歳を過ぎたあたりから次第に発症率は高まり、7歳を過ぎると歩行や寝起きが困難になるケースも増えていきます。
もし事前に愛猫の椎間板ヘルニアの発症リスクの有無を知っておくことができたならば、若く健康なうちから食事管理を徹底し肥満を予防したり、腰に負担がかかるような階段の昇降や抱っこも避けて暮らすことができます。
ロシアンブルーで発症リスクが高い糖尿病でも同じことが言えます。
シニア期になる前の段階からご飯などの口に入れるものを厳選することで、発症を遅らせることができます。
発症を遅らせることで健康な時間が増え、飼い主、猫ちゃん共々、穏やかな時間が増えるというのは言うまでもありません。
このように飼い主がやれることは実は沢山あります。
そのためには、まずはおうちの愛猫が遺伝性疾患のリスクがどのぐらいあるのかを知る必要があります。
遺伝子検査
動物病院で簡易的な視診や触診、聴診を受けても発見には至らないのが現状ですし、ましてや、外見や毎日の暮らしの様子からは想像ができません。
愛猫にどのような遺伝的傾向があるのか?遺伝性疾患のリスクの有無を知るには、遺伝子検査という方法があります。
遺伝子検査を聞くと高額な費用や痛みを伴う検査を想像される方もいるかもしれませんが、検査は非常に簡単で痛みもなく、入院も必要もありません。
手軽な検査で愛猫の伝性疾患のリスクが知りたいという方は検査を受けてみるのもいいかと思います。
おすすめはPontelyという会社の遺伝子検査です。
検査はアニコム遺伝子センターが行っており、遺伝性リスクを確実に知ることができます。
頬の裏側の粘膜を採取して送るだけで、2週間後には検査結果が分かります。
コースは3つあり、高額なコースになるにつれて、より多くの遺伝性疾患のリスクを調べてくれるというもの。
ペット保険の加入
ペットの医療は非常に専門性が高く、その治療法も多岐にわたります。
遺伝性疾患のように慢性化や再発を繰り返す症状の場合、治療が長期にわたることも珍しくありません。
愛猫が不調を訴えた時に安心して治療を受けることができるようにペット保険への加入も前向きに考えてみてください。
まとめ
遺伝性疾患と聞いてネガティブな感情を持ってしまうのも無理はありません。
現状の医療では完治が難しいのは事実ですが、飼い主としてやれることは沢山あります。
発症したからといったすぐに命を落とすというものではないですし、飼い主家族の対応によって猫ちゃんも安心して身を委ねてくれるはずです。
それに加えて、将来的に不安な方、少しでも長生きしてほしいという方は遺伝子検査もおすすめします。
特に純品種の猫ちゃんを飼っているならば、検査を受けてリスクの有無を調べるというのを視野に入れてもいいかと思います。
それによって、将来に向けて飼い主としてやれることは、さらに増えるはずです。