病気

犬が気を付けたい遺伝性疾患。命の危険性と症状。なぜ日本で多い?


遺伝性疾患とは染色体や遺伝子の異常によって発症する病気のこと。

疾患に関連する遺伝子を持っていることで発症しやすいとされているわけですが、遺伝子を持ってしまう最大の要因は親犬が持つ遺伝子をその子が引き継いでしまうというパターン。

突然変異でも起こることもあるのですが、こちらの確率はそこまで高くありません。

なお、悲しいことに近年、日本では遺伝性疾患の犬が多く、割合としては全体の3割にもなります。

諸外国と比べても、ペット業界が整備されていると思われる日本で、なぜ、このような事が起きてしまうのでしょうか?

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なぜ遺伝性疾患の個体が多いのか?


日本において、遺伝性疾患を引き起こす遺伝子を持つ犬が多い理由は以下の二つ。

特定の犬種に人気が偏ってしまう
悪質なブリーダーの存在

海外だと様々な犬種がまんべんなく飼育されているのですが、日本では上位トップ10の犬種を合計すると、犬種全体の7割以上を占めます。

そして、ブリーダーは利益を上げるべく、特定の犬種を大量に供給します。

本来、ブリーディングというのは様々な要素を加味した上で、親犬二匹を慎重に選んで行うものなのですが、利益しか考えていない悪質なブリーダーはそのような手間を省き、とにかく量産します。

結果、遺伝子を考慮せずにどんどんブリーディングを行い、限られた個体同士による近親交配が進んでしまい、遺伝性疾患を持った子が多く生まれてくることになりました。

遺伝子検査


遺伝性疾患について、疑わしい場合はいつでも検査することができます。

現在、飼っている子を交配させず、子を残さないのならば、気にする必要はありませんが、あなたがブリーダーであったり、過去の交配で生まれてきた子が遺伝性疾患を発症したことがあるのなら、交配前に検査することを推奨します。

一匹でも遺伝性疾患で苦しむ子を減らすべく、出来る限りのことはしてあげてください。

なお、近年では遺伝性疾患の撲滅に向け、様々な取り組みが行われているのですが、何よりも大事なのは遺伝子異常の個体を後世に残さないということ。

そのためには親犬を検査し、異常がある場合は絶対に交配犬として使用しないというのが大前提になります。

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遺伝性疾患の種類


単に遺伝性疾患と言っても種類はいくつもあり、当然、症状や治療方法は全く異なります。

それぞれの遺伝性疾患は発症しやすい犬種というのが存在するので、あなたが雑種やミックス犬ではなく、正式な犬種を飼っているのならば、下記をチェックしてみてください。

そして、同じ症状が見られたら、なるべく早く病院で診てもらうようにしてください。
中には早期発見によって救われたり、進行を遅らせることができます。

潜在精巣

睾丸が片方、体内に入っている状態。ガンのリスクがかなり高い。
(別名、停留睾丸と呼ばれることも)

雄犬ならば、全ての犬種が発症する可能性があります。

チェリーアイ

チェリーアイとは本来、目の裏側にある第三眼瞼線が表に飛び出している疾患。

発症しやすい犬種:セントバーナード、ビーグル、アメリカンコッカースパニエル、ボストンテリア、ペキニーズ、プードル

水頭症

その名の通り、頭に水が溜まる疾患。

厳密には脳内の液体成分が過剰になり、脳室が拡張した状態となります。

軽度だと症状はありませんが、うまく歩けなかったり、動作が緩慢、頻繁に転んだり、立ち上がれないといった症状が一般的。
さらには、しつけの覚えが悪かったり、睡眠時間が異様に長いといった症状も。

今回は遺伝性疾患の一つとして紹介していますが、頭部の外傷、脳炎、脳腫瘍といった後天的なもので起こることもあります。

発症しやすい犬種:ダックスフンド、チワワ、ポメラニアン、ヨークシャーテリアといった小型犬に多く見られます。

神経セロイドリポフスチン症

脳内の老廃物を除去するための酵素が欠損することで発症する疾患。

除去されずに溜まっていき、いずれは中枢神経障害を引き起こすことになります。

主な症状は運動障害、知的障害。
視力の低下や錯乱状態、方向感覚を失うといったことも。

そして、最終的には死に至るという非常に怖い疾患の一つとして知られています。

神経セロイドリポフスチンの発症はほとんどが1歳を過ぎた頃。
以降、老廃物が蓄積されていき、3歳を迎える頃に死に至ります。

現時点で治療方法はありません。

発症しやすい犬種:ボーダーコリー

ガングリオシドーシス

比較的、病気に強いとされる柴犬で発症しやすい遺伝性疾患がガングリオシドーシス。

細胞小器官の一つ、ライソゾーム内酵素の欠損、極端な低下によって、本来は代謝されるはずのガングリオシドが中枢神経系に溜まり、全身の臓器にケラタン硫酸やオリゴ糖が蓄積してしまい、神経症状を起こす病気。

生後半年頃から見られ、以降、徐々に進行していく。

脳をはじめ全身の臓器に異常をきたし、1歳を過ぎる頃に死に至ります。

変性性脊髄症

四肢が動かなくなり、やがて呼吸が出来なくなって死亡する病気。
多くのウェルシュ・コーギーが原因遺伝子を持っており、擁していない個体は僅か9%。

発症しやすい犬種:ウェルシュ・コーギー

捕捉好中球症候群

感染症から身を守る好中球が欠乏してしまう疾患。

実際のところは発症した犬も骨髄で好中球が作られているのですが、肝心の循環血中へ出て行くことができません。
結果、感染症にかかりやすくなります。

捕捉好中球症候群は早いと生後2週間、遅くとも7ヶ月には発症するとされていますが、多くが4ヶ月頃までに死に至ります。

通常の個体に比べると成長が極端に遅く、運動能力も乏しい。

発症しやすい犬種:ボーダーコリー

進行性網膜萎縮症

眼の粘膜が変性萎縮することで視力が低下し、最終的に失明してしまうという疾患。

初期症状としては暗いところで不安そうにしたり、物に当たってしまい、徐々に見えなくなっていきます。

中には白内障を併発することもある。
元々、トイプードルやチワワといった犬種で見られる疾患として知られていますが、他の様々な犬種でも発症する可能性はある。

発症しやすい犬種:トイプードル、チワワ等

遺伝性白内障

白内障とは眼のレンズの役割である水晶体が白く濁って視力が低下する疾患。
最終的には失明にまで至ります。

元々の白内障というと老化によって発症するのですが、こちらの遺伝性白内障は年齢に関係なく、遺伝子を持っている個体だと、生後数か月という幼犬の段階から発症します。

発症しやすい犬種:プードル、ボストンテリア、フレンチブルドッグ、アメリカン・コッカー・スパニエル、キャバリア等

コリー眼異常

網膜と結膜の間にある脈絡膜の形成不全。

視神経乳頭の周辺の新たな血管が網膜の出血、剥離といった症状が見られる眼に関する遺伝性疾患。

こちらに関しても生後数週間から2、3ヶ月といった時期から症状が見受けられ、最悪の場合、失明することも。
初期症状は視力低下による異常行動、不安そうに歩く、壁から離れない等。

なお、進行度合いは発症の時期によって大きく異なり、例えば、1~2歳で発症した場合は、ほとんど進行しないことも少なくない。

疾患名の通り、ボーダーコリー、ラフ・スムース、さらにはシェルティといった犬種で多く見られる。

フォンビルブランド病

出血時に止血するのに大きな役割を担うフォンビルブランド因子の低下、機能異常により、障害が起こります。

発症すると、軽度の傷であっても、多量の出血が見られる。
他には鼻、口腔内、血尿といった症状も。

タイプ1~3に分類し、数値が大きくなるにつれて重篤化しやすく、タイプ1に至っては症状はほとんどありません。

発症しやすい犬種:ウェルシュコーギー、ミニピンシャー、ドーベルマン、シェルティ、ゴールデンドゥードル

イベルメクチン中毒

イベルメクチン中毒とはフィラリアの薬に含まれている薬剤に過剰反応を起こすというもの。

高濃度で使用すれば、最悪の場合、命の危険すらある危険な病気でもあります。
微量でも反応することがある。

他にも抗菌剤、抗がん剤、免疫抑制剤、ステロイドといった薬剤にも反応するので、特に気を付けるべき犬種とされているシェルティを飼っているのなら、獣医師に相談する、場合によっては前もって検査しておくのも一つの選択肢なのかもしれません。

銅蓄積性肝障害

銅蓄積性肝障害とは銅の代謝が悪くなり、肝臓に銅が蓄積してしまう疾患。

初期の段階では無症状ですが、進行すると体重減少、食欲不振、下痢、嘔吐といった症状がみられるようになる。

急性肝壊死、慢性肝炎、肝硬変の徴候が見られます。

まとめ

犬が発症する遺伝性疾患は以上になります。

症状は様々ですし、進行した時の命の危険性もそれぞれで全く異なります。

普段と様子が違ったり、何か疑わしい症状がみられた時は速やかに対処し、かかりつけの医院で診てもらうようにしてください。

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