外耳炎症とは音の通り道である外耳道に炎症を起こし、かゆみや痛み、耳垢がしきりに出てくる耳の病気です。
犬の耳には入り口から垂直に下りる垂直耳道と、垂直耳道の突き当りから水平に伸びる水平耳道というものがあるのですが、これらのどちらか、両方が炎症している状態のことを外耳炎と言います。
この時の炎症がひどくなってくると、外耳道の皮膚が肥大化して塞がれてしまい、結果的に中耳炎や内耳炎を引き起こすことになります。
目次
外耳炎になりやすい犬種とは?
ゴールデンレトリーバーやシェルティ、バセットハウンド等の垂れ耳の犬種がかかりやすく、中でもアメリカン・コッカースパニエルは重篤化しやすい犬としても知られています。
他にはシーズーやマルチーズ、シャーペイといった犬種も比較的、発症しやすいので注意が必要になります。
外耳炎の原因
外耳炎を発症する原因は菌の感染、ダニ、アレルギーといったものが挙げられます。
原因がアレルギーによるものだと難しい部分がありますが、それ以外は予防によって回避することができます。
菌による感染
外耳炎の原因として最も多いのが、マセラチアとよばれる真菌(カビの一種)への感染によるもので、外耳炎全体の70〜80%を占めるとも言われています。
マセラチアは耳の中の他、口の周り、肛門などにも存在しています。
ただし、マセラチア自体は健康な犬も必ず持っているものなので、それだけですぐに外耳炎になる訳ではありません。
耳の中に水が入ったり、犬の免疫力が低下したりしてマセラチアが増殖すると外耳炎が引き起こされます。
ダニ
犬の耳にダニが繁殖した状態を耳疥癬(みみかいせん)といいます。
犬の耳に繁殖するダニは主にミミヒゼンダニとよばれる種類のダニですが、まれにニキビダニ、ヒゼンダニ、イヌセンコウヒゼンダニが原因となることもあります。
ダニは耳垢を分泌する組織(腺組織)を刺激するため耳垢が増えます。
また、耳垢の他に血液やリンパ液を餌とするため、血を吸う時に小さな傷が耳の中にできます。
このダニが付けた傷やダニの排せつ物が炎症を引き起こすのが、ダニによる外耳炎です。
犬が持つアレルギー
アレルギーなどによる皮膚炎が耳に現れ、外耳炎の症状となる場合があります。
人間と同じく犬のアレルギーも、体内に侵入した異物に過剰に反応し、自分自身にもダメージを及ぼしてしまう状態の事です。
アレルギーの原因となる物質のことをアレルゲンと呼びますが、アレルゲンの侵入に反応してさまざまな化学物質が放出された結果、局所的に血流が増え、熱やかゆみなどを発症させます。
犬の場合、このような皮膚炎の症状は、指の間、手首や足首の周辺、マズル、目の周りや結膜、腋の下、鼠径部(腿の付け根)、お腹、肛門周辺などと同時に耳の中にもよく現れます。
外耳炎の症状
1.かゆみが出る
2.耳垢がたまりやすい
3.耳垢が臭う
4.外耳道の皮膚が肥大化する
5.鼓膜が破れる
といったものが挙げられます。
発症したかどうかは耳垢が臭うどうかが最も容易に判断できます。
垂れ耳の犬種を飼っているならば耳掃除の際に臭いの有無を欠かさず行うようにしてください。
特に気温が高い梅雨から夏場にかけては菌が繁殖しやすいので、特に注意が必要になります。
他には
しきりに耳を掻こうとする
頭を振る
といった辺りが判断しやすく、上記の行動が頻繁に出た時は耳垢のチェックをするのが良いかと思います。
治療内容
外耳炎の治療の内容は症状の重さや原因によって異なります。
症状が軽い場合は点耳薬の処方だけで済む場合もありますが、重症化している場合は耳の洗浄のために通院したり、内服薬が必要になります。
ダニが原因ならば抗ダニ薬、感染によるものなら抗菌薬や抗真菌薬が投与されますので、原因をきちんと調べて貰うことが大切です。
アレルギーが原因になっている場合はもちろん、アレルゲンとなる物質を取り除く必要がありますが、完全に治すための治療方法は現時点でありません。
治療にかかる費用
外耳炎の治療にかかる費用ですが、通院が2、3回で済むような比較的軽い症状なら2,000〜3,000円くらいがおおまかな目安です。
ただし、通院が2ヶ月も続くと薬代と合わせて10,000円を超えることも珍しくありません。
費用という意味でも、症状が重くならないうちに早めの受診をおすすめします。
また、外耳炎が慢性化し、発症を繰り返すようになると飼い主の負担も大きくなるので、原因をきちんと見極め、再発を防ぐための予防というのも重要になってきます。
予防方法はある?
予防方法はとにかく、耳掃除を怠らないこと。
これに尽きます。
耳が汚れていないかチェックして、汚れていればイヤーローションや脱脂綿、綿棒などで傷がつかないよう優しく汚れを拭ってあげてください。
ただし、必要のない時に耳掃除をすると耳の中を傷付ける事になり、逆に外耳炎の原因になる場合もあります。
特にイヤーローションを使って掃除する際は、残った湿気によって感染する可能性があるので、仕上げ時にしっかりとふき取ってあげてください。
また、普段の行動と異なったり、耳垢が普段と違う(色が黒や茶色っぽい、粘つく、臭う、量が多いなど)場合は早めに獣医を受診するようにしてください。
さいごに
外耳炎は犬にとって決して珍しい病気ではありません。
早めに対処すれば怖い病気ではありませんが、重症化すると中々治らなかったり慢性化して再発を繰り返すなどなかなかやっかいな病気でもあります。
外耳炎を予防するための日常的なチェックや耳掃除はもちろんのこと、万一発症した場合は早めの対処、治療が重要になってきます。