犬にとっても歯磨きは重要なものだと知られるようになって以来、歯磨きを含むオーラルケアにしっかりと取り組む愛犬家が増加傾向につあります。
日本歯科医師会によれば日本人の70%以上が歯周病を抱えていると言われていますが、実は犬も同じ状況で、3歳以上の犬の80%以上が歯肉炎や歯周病、虫歯や口臭といった口腔トラブルを抱えています。
今回は犬の口腔トラブルとその対策、歯磨きの手順を紹介していきます。
目次
犬の歯磨きの重要性、手順と方法とは
愛犬の口臭が気になったことはありませんか?
愛犬の歯や歯の根元が黄色く変色していませんか?
該当するならば、それは愛犬が口腔トラブルを抱えている証拠で、歯肉炎や歯周病になっている状態です。
すぐに対策を取らなければ、歯が抜け、食事がとれなくなり、口から全身に細菌やウイルスが侵入して全身性の病気に感染する危険があります。
また、満足に食事をとれなくなると、健康上の問題にも繋がってしまいます。
犬にとっての歯磨きも人間同様、決して軽視することはできません。
歯磨きを怠るとどうなる?
犬も人間と同じく、歯磨きを怠ると歯石が付きます。
食べ物のカスは口の中の雑菌のエサになり、歯を磨かず食べ物のカスを放置しておくと雑菌が口の中で増殖し、歯垢と呼ばれる塊になります。
ちなみに犬の場合は歯垢は3日で歯石になります。
つまり、この3日のうちに、いかに口の中の汚れを落とせるかが重要になり、ある日は下の歯、次の日は上の歯、その翌日には仕上げ、歯の裏側といった様に、段階に分けて磨くのも歯磨きの一つの方法として、様々な媒体、メディアで紹介されています。
慣れないうちは参考にしてください。
最近は硬いドライタイプのドッグフードだけでなく、柔らかいウェットタイプが販売されていますし、クッキーのようなおやつを利用する愛犬家も増えています。
ウェットタイプやスナック類は口の中に食べカスとして残り易く、口腔トラブルの一因となっているので、より、しっかりした歯磨きが必要になります。
なお、お口の四大トラブルは以下のようなものです。
歯肉炎になる
歯の根元、歯と歯肉の間には狭い隙間があります。食べ物のカスがここに挟まると、そこで雑菌が繁殖し歯垢が溜まります。
この歯垢が石灰化して歯石になり、歯と歯肉の隙間が広がって歯周ポケットができます。
歯周ポケットができると食べかすが溜まり易くなり、歯垢が増え、歯石も増えるという悪循環になります。
歯周ポケットが深くなるにつれて歯肉が腫れ、歯の根元が赤黒く変色します。炎症が長引くと痛みや出血の症状が出て、犬は食欲が減り、口元を掻いたりイライラしたように吠えるといった様子を見せるようになります。
口臭がきつくなる
歯周ポケットの中で雑菌が繁殖し、膿が溜まるため、口臭がきつくなります。口臭は既に歯周ポケットができていて歯肉炎になっているサインとも言えます。
放置しておくと、歯肉から出血したり、炎症による痛みで触れられることを嫌がるようになり、オーラルケアが難しくなります。
歯周病になる
歯肉炎が進むと歯周病になります。次のような症状が歯周病のサインです。
・歯肉が腫れて赤黒く変色している
・歯肉から出血する
・歯がグラグラ揺れる
・歯が抜ける
・食事ができなくなる(流動食など介護が必要になる)
こうなってしまうと充分な食事がとれなくなり、また歯の根元から体内へ細菌やウイルスが侵入し易くなり、病気のリスクが高まります。
虫歯になる
犬は虫歯になり難いと言われていますが、歯によっては歯垢が溜まることがあり、歯垢の中の細菌が作り出す毒素(酸やタンパク質分解酵素)によって歯が変色したり溶けてしまいます。
犬の歯が茶褐色や黒っぽく変色している場合、虫歯の可能性があります。
虫歯になると歯に穴があき、そこから細菌やウイルスが侵入します。最終的に全身性の病気に感染してしまう恐れも。
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具体的な治療はどんなもの?
歯周病の治療は、歯石を取り、歯に歯垢がつきにくくする処置を行います。犬は口を開けて動かずにいる、ということができないので、全身麻酔が必要になります。
治療の手順
・治療前検査を行う
・麻酔をする
・超音波スケーラーで歯石を削り取る。
・歯周ポケットの中の歯垢を除去する。
・歯垢などが付きにくいよう、歯の表面を磨く。
このような手順で治療を行います。
手術には1~3万円程度必要と言われていますが、歯周病の進行状態によってはレントゲン撮影や歯肉の切開、抜歯が必要になり、費用が高額になるケースもあります。
なお、麻酔無しの治療もありますが、これでは歯周ポケットのケアがうまくできないことがあります。
金属の道具で歯周ポケットの中の歯石を掻き出す時、犬が動いてしまうと歯肉を傷付けてしまいます。麻酔無しで施術を受けられる犬には限りがあり、根本的な治療にならない場合があります。
しっかりと治すとなると、麻酔を施しての治療が必須となります。
進行してしまった歯周病の場合は、歯科のある動物病院に掛かることをお勧めします。
ケアの仕方や専門的な治療を受けることができます。
歯磨きできる犬にするためのしつけとは
歯石が付いたり虫歯になるといった口腔トラブルはどうすれば避けられるのか?
それは歯磨きできる犬にするということが大切です。
・口に触れられても嫌がらない
・口を掴まれても抵抗しない
・唇をめくられても怒らない
・前歯や奥歯に触れることができる
・口に食べ物でないもの(歯ブラシなど異物)を入れても抵抗しない
・一定時間、動かずに居られる
こうしたことができなければ、歯磨きはできません。
子犬の頃からしつけの一環として少しずつ慣らしていってください。
特に「口を掴まれても抵抗しない」ということは「飼い主を主と認めている証拠」です。
口を掴んだ時に噛み付いてくる(甘噛みも含む)場合は自分の方が優位に立とうと抵抗する証拠です。
この場合、長時間掴む必要はありませんが、毅然とした態度で「飼い主の立場が上」ということを覚えさせてください。
※これは歯磨きどうこうではなく、しつけとして最低限やるべきことでもあります。
歯磨きの方法と使いたい道具
具体的な歯磨きの道具と使い方、手順を列挙してみました。
口に触れられても抵抗しないよう慣らす
これが必須条件となります。口を掴んだり、唇をめくっても怒らないよう慣らしてください。
これができず、暴れるようであれば歯磨きの時に怪我をさせてしまう危険があります。
子犬の頃から遊び・スキンシップの一環として、口の周りに積極的に振れたり、歯を剥き出しにしたりしてください。
ガーゼで歯を拭いてみる
最初は触れやすい場所にある歯1本からで充分です。
抵抗せずにできたら盛大に褒めてあげてください。
ご褒美におやつのスナックをひとかけら与えても良いです。1本できたら2本、3本と増やしていってください。
完全に歯磨きができるようになるまでは、おやつなどのご褒美は問題ありません。
歯磨きすると良いことがある、と覚えてもらいます。
歯磨きに抵抗がない子になるまでは、磨くというより訓練と思って取り掛かるぐらいの方がいいかもしれません。
子ども用の柔らかい歯ブラシを使う
ガーゼが平気になったら子ども用の柔らかい歯ブラシを使います。
オモチャと勘違いしてガジガジ噛むだけ、というのでは意味がありません。
必ず飼い主がリードして「磨く」ということを覚えてもらってください。
これもガーゼの時と同じく1本から始めます。ガーゼと併用もOK。
慣れてくれば歯の根元も磨けるようになり、歯周ポケット予防もできるようになります。
歯ブラシは鉛筆を持つようにして持ち、ゴシゴシ力をいれずに一本ずつ丁寧に磨いてください。
歯垢が歯石になるまで3日程度かかる、と言われていますから、毎日完璧に全てを磨こうと思わなくても大丈夫です。
慣れるまでは、今日は下の歯だけ、明日は上の歯、と分けても構いません。
徐々に時間を長くして、最終的にはご褒美のおやつなしでもできるようにしてください。
終わってから外でボール遊び、といったご褒美に変えてもよいですね。
まとめ
犬の歯磨きは大切なことですが、できるようになるまで根気よく練習を続ける必要があります。
歯石を完全に除去したり、虫歯を治すようなことは期待できませんが、デンタルケアグッズも併用しながら、口腔トラブルを避け、年齢を重ねても美味しく元気に食事ができるように気を付けてあげてください。