狆という名前こそ知っていても、実際にどんな犬なのか知っている人は多くはないでしょう。
確かに古くから日本で愛されてきた犬ですが、過去には逆輸入という形で保護され、なんとか絶滅を逃れてきた歴史を持ちます。
今回はそんな狆という犬について紹介していきたいと思います。
飼育してみたいと思っている人は、その特徴をしっかりと知っておきましょう。
目次
狆ってどんな犬?
狆はなめらかなロングコートに口吻の短い鼻ペチャ顔が特徴的な小型犬です。
そしてそんな西洋風な見た目とは裏腹に、日本で初めて「日本犬」として登録された犬種でもあります。
元々はチベタン・スパニエルやペキニーズの系統の犬種であり、日本には西暦500年代~900年代にかけて多く入ってきたと言われています。
その美しい見た目に加えて、「落ち着きがある」「においが少ない」「あまり吠えない」という性質から、長い間貴族などの上流階級を中心に愛されてきました。
「狆」という名前は、「ちいさいいぬ」が変化して「ちん」という呼び名になり、「家の中で飼う犬」という意味で「狆」という漢字が当てられました。
関連記事:日本原産、狆ってどんな犬?誕生からの歴史、現在の飼育頭数は?
狆は飼育しやすい?
狆は小型犬ということに加え、性格も穏やかで落ち着いていることから、比較的飼いやすい犬種だと言えるでしょう。
初心者でも飼育はそんなに難しくありません。
古くから愛玩犬として飼育されてきたことから、性格は甘えん坊で懐きやすく、小さな子供や他の犬に対してもフレンドリー。
※性格に関しては後ほど、詳しく書いています。
性格以外の面で言えば、体臭が少ないという特徴が大きなメリットですが、抜け毛は多いので、手をかけてあげる必要があります。
あまり吠えない子も多いので、日本の住宅事情にはかなりマッチした犬種かと思います。
しつけは難しい?
狆はとても賢く、そして飼い主の気持ちを察する能力に秀でています。
ただし、しつけをしなくても大丈夫ということでは決してないので、しっかりとしつけを行いましょう。
狆はとにかく飼い主を喜ばせるのが好きなので、しつけに苦労することは少ないはずです。
触れ合いなどのコミュニケーションを交えつつ楽しくしつけを行い、出来たら目一杯褒めてあげると、喜んでしつけを覚えてくれるでしょう。
狆の被毛の特徴
狆は長くなめらかなロングコートを持ち、その毛量も比較的多いです。
かつてはシングルコートの個体のみだと言われていたようですが、近年ではダブルコートの個体も少なからず存在することが分かっています。
毛色は白地に黒の斑が一般的で、他にも白地に茶(赤系、黄色系など)、白地に黒と茶のトライカラーなども。
現在ではそこまで重要視されることはありませんが、かつては顔の斑が左右対称であるほど美しいとされていました。
抜け毛は多い
「狆は比較的抜け毛が少ない」と言われることが多いですが、実はそんなことはありません。
毛が長いので少量でも目につきやすいというのもありますし、特にダブルコートの個体はシングルコートの個体に比べて抜け毛が多いです。
本当に抜け毛の多い犬種(柴犬やゴールデンレトリーバー)などと比べたり、犬を飼うことに慣れている人にとっては「抜け毛が少ない」と感じられるかもしれませんが、初めて犬を飼うような場合やプードルなど抜け毛の少ない犬と比べると、狆は抜け毛が多い犬と言えるでしょう。
ケアは大変?
ロングコートの犬種全般に言えることですが、綺麗な被毛を保つためには、日々のケアが欠かせません。
被毛のトラブルは皮膚のトラブルにも繋がりかねないので、しっかりとケアを行いましょう。
ブラッシングは最低でも週に2回、できれば毎日行うのがベスト。
特に抜け毛の多い換毛期はブラッシングをすることで家中に散らかる抜け毛を減らすことにもつながります。
ブラッシングのコツとしては根元から一気にブラシを入れると絡まってしまうことがあるので、毛先から順にほぐしていきます。
そして、被毛が汚れている場合は、月に1~2回を目安にシャンプーをしてあげましょう。
特に毛が長いとお尻や性器周りが不衛生になりやすいので、清潔に保つようにしてあげてください。
基本的に狆は毛が伸びにくいのでトリミングは必要ありませんが、清潔を保つために汚れやすい場所だけカットしてもらうのもいいでしょう。
狆の性格
狆の性格を簡単に表現するなら、賢く、穏やかで開放的です。
人と接してきた歴史も長く、協調性のある性格をしています。
その協調性から、子供とも遊んでくれたり、さらには共に暮らす他の犬に対して攻撃的な部分を見せることもまずありません。
これは飼い主家族だけでなく、初めて会う人に対しても同じで、積極的に愛嬌をふりまいたり、自分から寄って行こうとする仕草を見せます。
また、感受性が豊かで、飼い主の顔色をうかがうことがあります。
喜んでいると嬉しそうにし、逆に悲しんでいると寄り添う等、飼い主とより密接な関係でいてくれるのも狆の特徴の一つでもあります。
なお、代表的な日本犬に柴犬や秋田犬等がいますが、彼らとは全く異なる性質を持っており、性格だけでみれば狆の方がしつけもしやすく、飼いやすいとされています。
両者とも数少ない日本原産の犬ですが、見た目も含め、ここまで明らかに異なる犬種というのも世界的に見て珍しいのではないでしょうか。
猫のような犬?
狆は自分でグルーミングをしたり、高い場所が好きだったりと猫のようなところがあります。
時に猫のような気質、性格の犬と評されることがありますが、狆は猫にありがちなツンデレというわけではなく、性格的にも協調性がありますし、気難しさを感じることもほとんどありません。
この猫のような犬とされるのは先に紹介した狆ならではの行動から来るものであって、内面的な部分で似ているということはほとんどないといえます。
子犬の価格
狆の子犬の価格はおおよそ15~20万円、成犬になると10~15万円が一つの相場となっています。
需要もそこまで大きくないので、価格は安定しており、血統が良くても30万円を上回ることはほとんどありません。
古くから人と過ごしてきた狆ですが、現在の流通は多くありません。
同じような犬とされるペキニーズであればペットショップで見る機会があるものの、狆の場合はなかなかありません。
※知名度が上がらない一つの理由ともいえそうです。
購入するとなるとブリーダーから、年齢などにこだわりがなければ里親募集で見つけることもできます。
狆の大きさ
狆は体高と体長がほぼ同じくらいの、スクエア体型です。
平均すると体重は3kgですが個体差が大きく、中には2kgほどしかない個体や、逆に8kg近い巨体になる個体もいるそうです。
狆の寿命
狆の平均寿命は12~14歳。
小型犬としては平均的で、長いほどではありません。
古くから室内犬として飼育されてきたため、体温の調節が苦手なところがあります。
マズルが短いため、暑さは特に苦手です。留守番中や夏の散歩は特に注意してあげる必要があります。
まとめ
近年ではその人気が洋犬に奪われてしまった狆ですが、見た目、性格、飼いやすさなど、どの点でもとても優れています。
被毛のケアなど、手間がかかる部分もありますが、それを差し引いても有り余る魅力にあふれた犬でもあります。
少しでも多くの人に、我が国原産の狆の魅力が伝わってほしいと思います。