ボルドーマスティフはフランス南西部、大西洋近くの世界遺産にも登録されている美しい街、ボルドー原産のマスティフ犬です。
時にフレンチマスティフ、ドーグ・ド・ボルドーと呼ばれることもある彼らですが、14世紀以前からフランス人と関わりを持ち続けてきた古い犬種でもあります。
日本においては、過去に度々ニュースで取り上げられてきたチベタンマスティフ、歴史が古く、飼育頭数が最多のイングリッシュマスティフが有名ですが、実はこのボルドーマスティフは2019年現在、日本で2番目に飼育されているマスティフ犬でもあり、2018年に限っては最も登録頭数が多い種でもあります。
今回はそんなボルドーマスティフの犬種としての特徴や歴史、飼育にまつわる情報について紹介していきたいと思います。
目次
ボルドーマスティフってどんな犬?
ボルドーマスティフは14世紀頃のフランスのボルドーで闘犬用の犬種として誕生したとされています。(さらに古い犬という説も)
以来、闘牛、狩猟犬、放牧犬として活躍し続けてきましたが、家庭のパートナーとして飼われるようになったのは18世紀に入ってからで、フランスの貴族に飼育されるようになると、知名度は大きく増していきます。
なお、大きな身体と怖そうな顔つきであるため、敬遠されがちなボルドーマスティフですが、信頼を置く飼い主の言うことはきっちりと守ることができる忠実な犬でもあります。
ただ、飼い主の指示を守ることができるのも、しつけが行き届いている場合であって、子犬の頃に疎かにしていると問題行動へと発展することがあります。
飼育するには子犬の頃に厳しいしつけを正しく行うというのが大前提になります。
海外、国内において度々、飼育が難しい犬に挙げられることも多く、熟練者でないと飼育ができないとされています。
それでは細かい部分について見ていきましょう。
ボルドーマスティフの見た目の特徴
ボルドーマスティフの見た目の特徴はなんといってもがっちりとした頭の大きさにあります。
窪んだラインのある短頭蓋という典型的なモロシアンタイプのマスティフです。
成犬の体高は牡で60~68cm、牝で58~66cm
体重は45~50kg程の大型犬で筋骨隆々のがっしりとした体型をしています。
顔つきは独特でこわもてであるように見えますが、よく見ると困っているような愛嬌のある表情をしているところが多くの人に愛される犬種となっている要因の一つです。
闘犬用にブリードされた犬種の特徴として鼻高が低く(ショートマズル)、皮が垂れ下がっていて伸びやすく、強靭な顎を持っています。
被毛の特徴
被毛は少し固めのスムースコート(短毛)でオレンジがかった赤毛が特徴です。
マホガニーからイザベラまでが許容色とされていますが、色の濃いほうがより良いとされます。
色の名称はばらつきがあり様々な名称で呼ばれていますが、ウイスキーの色に近いことから「ウイスキー」や犬種の由来となるボルドー地方から「ボルドー」「ボルドーレッド」などと呼ばれることが多いようです。
被毛は密集したアンダーコートと硬い短毛のアウターコートのダブルコートです。
季節の変わり目に抜け毛はありますが、短毛のため気になるほどではありません。
屋外でブラッシングをかけてあげれば室内飼育でも気にならない程度です。
しつけの方法
ボルドーマスティフは成長とともに力も強く頑強な成犬に育つので子犬の頃からのしつけがとても重要です。
基本的には賢く従順な性格を持つ犬種なのでイエスとノーをはっきりと伝達することで自分の行動範囲をわきまえていきます。
神経質な部分も併せ持つので、極端に矯正をしてしまうと卑屈になったり反抗的になったりすることがあるので、愛を持ったしつけを心がけるとよいでしょう。
ただし、甘やかし過ぎは禁物です。
支配欲の強い側面もありますので大きくなると手がつけられなくなる可能性があります。
子犬の頃から主従関係を明確に位置付けることが大切です。
多少しつけには技術が必要ですが、一度信頼関係を築いてしまえばとても従順なパートナーとなる犬種です。
運動量
ボルドーマスティフの運動量はほかの大型犬に比べてさほど多い方ではありません。
セッター種のように走る回るようなことはないので、それほど広い場所ではなくても飼育しやすい犬種です。
大型犬全般に言えることですが、あまり激しい運動をさせすぎると腰に負荷がかかりすぎて怪我につながる可能性もあります。
かと言って運動が足りないと足腰の筋肉が減少して関節症などを起こす場合があります。
毎日、一時間以上の散歩をして適度な運動を心がけるようにすると良いです。
ボルドーマスティフはどんな性格?
ボルドーマスティフは性格は基本的にはとても穏やかで忠実な犬種です。
軍用犬を闘犬として転用した経緯からも我慢強く護衛能力に優れています。
パートナードッグとしてとても優れており、主人に忠実に従い、家族を大切にします。
刺激に対しても安定していて反射的な暴走はあまりありません。
しかし、忘れてはいけないのは闘犬として繁殖されてきた歴史があるということです。
常に警戒心を持っていて、穏やかに過ごしているようでも警戒を解くことはありません。
家族とみなしているものに危害を加えられたり、自らの危機を感じたりして闘争本能にスイッチが入ると致命的な攻撃を加える本能を持ち合わせています。
このため、飼育には力を制御するためのパートナーシップとトレーニングが必要となります。
歴史
ボルドーマスティフの誕生の歴史ははっきりとはわかっていませんが、14世紀頃にフランスのボルドー地方で闘犬として繁殖されたものを起源とする説が有力です。
はじめは闘犬として用いられ、ジャガーやクマ、時には人とも戦わせて当時の娯楽となっていました。
闘犬の他には、猪狩り用の猟犬、護衛用の警備犬、牛の誘導や管理を行う牧牛犬としても用いられていました。
ちなみにボルドーマスティフですが、過去に2度の絶滅の危機に遭遇しています。
フランス革命の際には、貴族に飼われていた多くの犬が殺傷処分され絶滅の危機に陥ったこともありますが、牧牛犬として残った犬を元に繁殖を行って絶滅をまぬがれました。
二度目の危機は第一次・第二次世界大戦の頃。
闘犬の廃止や牧牛の機械化に加えて、大戦の戦禍によって個体数が激減してしまいます。
この時には、愛好家などの手によって安全な地域に疎開させるなど、分散飼育をして現在にその種をつなぐことができています。
使役する場を失ったボルドーマスティフですが、ペット文化の定着によりその愛らしい風貌からイングリッシュマスティフに並ぶ世界的な人気犬種となり愛玩犬やショードックとしての飼育が定着しています。
もともとは獰猛な闘犬ではありましたが、愛玩犬として飼育される過程の中で現在は幾分か穏やかな性格になってきています。
とはいえ、穏やかな性質になっていったのもここ70~100年の話で、ボルドーマスティフ誕生から700年(さらに長い可能性も)という歴史と比べると、ごく一部に過ぎません。
あくまで、過去と比べて穏やかになってきたというだけであって、決して穏やかな犬ではないというのは覚えておいた方がいいかもしれません。
日本での飼育頭数は増加傾向
ヨーロッパでの人気が高い犬種ではありますが、日本国内での飼育頭数も増加傾向にあります。
下記の左側の数字はボルドーマスティフ、右側の数字は最も飼育頭数が多いイングリッシュマスティフの登録頭数です。
2018年 30頭 7
2017年 5 31
2016年 12 0
2015年 9 28
2014年 7 19
2013年 12 15
2018年に至ってはイングリッシュマスティフを抜いて30頭と、マスティフ種の中で最も多くなっています。
名前こそ知られていませんが、毎年、一定数飼育されいるというのが見て取れます。
まとめ
ボルドーマスティフの特徴は以下のとおり
・以前に比べると穏やかに
・家庭犬として飼育されるようになって歴史は浅い
・子犬の頃のしつけが最重要
・日本でも僅かながら飼育されている
・2018年に限っては30頭
小型犬が人気の日本においては怖そう、大型犬であるという理由だけで敬遠されてしまいがちですが、魅力はいくつもあります。
詳しい理由は分かっていませんが、事実、2018年に一気に飼育頭数が増えましたし、今後、飼育頭数が大きく増える可能性があるかもしれませんね。