ほんの少し噛むだけならまだしも、「思いの外、強く噛まれた」、「甘噛みの痕がミミズ腫れになった」という方もいるのではないでしょうか。
ペットブームで多くの方が犬を飼うようになり、残念ながらしつけに失敗して犬の問題行動で悩んでいるケースが増えています。
この問題行動の中に「甘噛み」も含まれており、犬はじゃれたつもりだったけれど、相手の子供が怪我を負ってしまった、というケースもあります。
犬が人を傷つけることは好ましくありません。
しかし、この「甘噛み」をしつけでムリに止めさせる必要はない、という意見も多くありますが、この辺り、どうなのでしょうか。
目次
甘噛みはしつけで止めさせるべきか
結論から言うと、甘噛みは、しつけによってやめさせるべきであると考えています。
とは言え、実際のところはドッグトレーナーや専門家の間でも賛否両論あるのも事実。
・犬の犬らしい点をそのまま認めるべき
・飼い主がリーダーで、犬が従う、というしつけは不適
・飼い主がリーダーであり、犬は従うべきと子犬の頃から教えるべき
「噛む」という行為は犬にとって本能的な行動であり、「甘噛み」は子犬達が遊びやコミュニケーションの一つの手段です。
こうした、犬が犬であること自体を受け入れよう、という考え方のトレーナーもいます。
ほかにも「現在の愛玩犬の多くは野生の犬から大きくかけ離れた性質を持つ犬であり、従来通りの『飼い主がリーダーで、それに従わせる』というしつけは不適である」という考えだったり、一方では「犬はリーダーに従って群れで生活していた動物なので、人がリーダーとして犬を従わせる」という意見も聞きます。
どの考え方が正解で、どれが間違っている、とは言い難いのですが甘噛みが人に危害を加える行為に発展する可能性がある以上、やはりしつけで正してあげるのが人と生活を共にする上で重要なのではないかと考えています。
関連記事:犬が甘噛みをする5つの理由(しつけの前に知っておいてください!)
甘噛みの止めさせ方
甘噛みを止めさせるには飼い主の方が順位が上であると覚えさせることが有効です。
甘噛みした時に「短い言葉でわかりやすく叱る」、「口を軽く掴む」といった方法もありますが、まず、次のようなことを日常的に行い、順位を覚えさせるようにしましょう。
また、散歩や遊びといった犬にとって楽しい時間を十分確保し、楽しい経験の中で飼い主に従う、というルールも覚えさせるようにしてください。
散歩時間を十分確保する
小型犬であっても、一日最低一時間は散歩時間を確保してあげましょう。
単純に歩くだけでなく、公園で走る、階段や坂道を駆け上がる、オモチャを追いかける、など変化のある散歩をして「楽しい運動の時間」を確保してあげてください。
これはストレスを溜めないための大きな対策になります。
関連記事:犬がストレスを感じている時に起こす4つの行動パターン
なお、中型犬になると朝夕一時間ずつの散歩が最低限必要になりますし、大型犬になると更に多くの運動が必要になります。
また、ハウンド系の犬の場合は「小動物を追いかける」「全力で走る」という狩猟や闘争などの特性が強く残っているケースが多いので、そうした本能を満たす時間を作ってあげる必要があります。
オモチャでしっかり遊んであげる
犬はボールを追いかけたり、細長い紐状のオモチャで引っ張り合いをする、といった遊びが大好きです。
「小さな獲物を追いかける」「獲物に噛みつく」「闘争する」こうした本能を満たしてあげるためにも、積極的に遊んであげてください。
ただし、遊びを始めるタイミング、遊びを止めるタイミングは飼い主が決めます。そして、オモチャを飼い主が確保して終わりにします。
動物は強いものが獲物を獲得します。飼い主が獲物を確保することで、犬よりも飼い主の方が強い、と覚えさせます。
食事は必ず飼い主が与え、置き餌をしない
群で生活する動物は強いものが餌をとってきて先に食べ、順位の低いものは残りを食べていました。ですから愛犬には必ず飼い主が家族が食事を終えた後に餌を与えるようにします。
置き餌はしません。
自分で餌をとってきて食べる、という行動がとれないように注意しましょう。
こうすることで「自分よりも強い飼い主に餌を与えられている」ということを教えることができます。
人の食べ物は与えない
家族で食事をしている時、愛犬が寄ってくると、ついつい分けてあげたくなりますが、分け与えることは厳禁です。
犬が「自分は家族と同等である」と勘違いしてしまいます。
また、犬が食べてはいけないものを与えてしまう危険があるので、人が食べている物を与えないようにしましょう。
関連記事:危険!絶対にダメ!犬に食べさせてはいけないNG食品
日常的に口の周り(マズル)に触れる
母犬は子犬にダメだ、と教えるときに口に噛みつきます。
兄弟犬同士で遊んでいる時にも、強い方が弱い方の口に噛みつくことがあります。口を抑えられた方は「服従を受け入れる」ということになります。
こうしたルールや噛む強さは、母犬や兄弟犬と過ごす中で自然に覚えていきます。
しかし、子犬は小さい方が高値がつくため、ルールを覚える前に母犬や兄弟犬から引き離されてしまうケースが多くあります。
ルールを知らない犬の口を掴むと反発され、噛みつかれることがあります。
これは「ルールを知らない」「まだ服従していない」「勝てると思っている」可能性があります。
怪我をする危険があるので、急に掴んだりせず、遊ぶ時などに少しずつ触れて慣らしていく必要があります。
甘噛みをした時に口を軽く掴み、短い言葉で叱る
犬と飼い主の間に信頼関係が築かれている、ということが大前提です。
犬とアイコンタクトをとることができ、犬が飼い主の目を見て指示をきける状態になっているのであれば、甘噛みした時に口を軽く掴み「No!」もしくは「ダメ」と短く叱る、ということが有効です。
オーラルケアを毎日行う
これはしつけというよりも、日常的な部分。
3歳以上の犬の8割以上が歯肉炎や歯周病にかかっていると言われています。
歯周病が進むと歯肉に膿がたまり、出血したり、体内に細菌が侵入して全身性の病気を発症したりします。また、歯が抜けてしまうと食事がとれなくなり、体力の低下したり、介護が必要になってしまいます。
今は犬も毎日の歯みがきが欠かせなくなっています。
歯みがきをするためには「口に触れられても抵抗せず、動かない」「唇をめくりあげられたり、口の中に歯ブラシを入れられても抵抗しない」という犬にしなければなりません。
子犬の頃から口に触れて慣れさせることは、甘噛みを止めさせたり、服従させる、という以外にも健康を守る、という大切な意味があります。
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まとめ
犬の「噛む」という行動には様々な意味があり、それぞれを考えると「甘噛みをしつけで止めさせる」というのが不適切にも思えます。
しかし人を傷つけることは許されません。このために「しつけ」は欠かせませんし、「順位付け」を人と犬との間でも行うことは必要だと考えられます。
基礎となるのは人と犬の間の信頼関係です。必ずそれを築き上げ、犬の欲求を満たしてストレスを溜めない環境を作りながら、しつけていく、といった方法をとってください。
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