「忠犬ハチ公」でもお馴染みの秋田犬。
日本人にとっては、とても身近な犬種ですね。
ハリウッドで「HACHI約束の犬」が映画化されたこともあり、その忠誠心の高さや凛々しさと可愛さを兼ね備えた風貌で、海外でもブームとなっています。
しかし秋田犬は飼育が難しい一面もあるので、ブームに乗って安易に手を出してはいけません。
こちらでは秋田犬について詳しく紹介していくので、きちんとした飼育を行うためにも、まずは秋田犬のことをよく知っておきましょう。
目次
秋田犬ってどんな犬?
「秋田犬」の読み方は、「あきたけん」ではなく正しくは「あきたいぬ」。
その名の通り秋田県が原産の犬種であり、ふかふかとした毛並みと愛嬌のある顔立ちが特徴です。
ピンと立った三角の耳、くるんと巻いたしっぽ、思いのほかガッシリとした頑丈な体つき。
忠犬ハチ公のイメージからあまり大きな犬種ではないと思われがちですが、秋田犬は日本原産の犬種では唯一の大型犬です。
関連記事:日本犬は6種類!性格、寿命、しつけ方法に違いはある?
世界中の犬種の中でも、よりオオカミに近いDNAを持っていると言われていますが、その血統は一時期絶滅寸前まで追い詰められたことも…。
そういった経緯から国の天然記念物にも指定されており、血統を保護する活動も盛んに行われています。
秋田犬の歴史
日本人にとってはなじみの深い秋田犬ではありますが、意外にもその歴史は浅く、きちんとした犬種として確立されてからは100年ほどしか経っていません。
彼らの祖先は秋田マタギ犬と呼ばれる山岳狩猟犬。
マタギ犬は現在の秋田犬ほど大型ではなく、今でいう中型犬程度の大きさしかなかったそうです。
しかし江戸時代に「闘犬」が流行したのをきっかけに、力が強く身体能力も高いマタギ犬は闘犬として活躍するようになりました。
明治時代に入ってからはより大きくて強い個体を作り出すために、ジャーマン・シェパードやマスティフ、グレート・デーンと言った大型犬との交配が盛んに行われ、秋田犬の大型化、雑種化が進んでいくことになります。
しかし明治末に闘犬が禁止され、時代が大正に移る頃には、秋田犬という種を保存すべきという動きが盛んになってきます。
雑種化の進んでいた秋田犬の血統を保護し、昭和6年には9頭の犬が「秋田犬」として天然記念物の指定を受け、戦時中の混乱をしのぎながらも現在のようにしっかりとした血統を残すことに成功しました。
人間との関わり
人間と秋田犬は、古くから密接な関係を持っています。
古くは狩猟犬で鹿や熊狩りのパートナーとして活躍し、その後は闘犬としても活躍してきました。
闘犬として活躍していた時代には大きさや強さばかりが重視されたものの、昭和初期に「忠犬ハチ公」が話題となってからは、その忠誠心の高さが世に広まっていきます。
戦時中には純血種は絶滅寸前まで陥ったものの、戦後混乱期には番犬として重宝されたりと、再び秋田犬は一躍大ブームに。
アメリカ軍兵士が好んで飼育したこともあり、アメリカへと渡った当時の秋田犬たちの血統は、現在ではアメリカン・アキタとして秋田犬とは別種として登録されています。
近年では秋田犬がメディアに取り上げられることも多くなり、ペットや番犬として、更に多くの人々に親しまれるようになりました。
秋田犬の海外での人気
海外での秋田犬ブームに火をつけたのは、映画「HACHI約束の犬」。
忠犬ハチ公を映画化したもので、ハチ公の健気な姿やその忠誠心に心打たれた海外のファンが急増したのです。
特にイタリアでは空前の秋田犬ブームが巻き起こっており、一説では日本よりも多くの秋田犬を飼っているのではないか、と言われるほど。
また、「秋田犬保存会」はアメリカやのロサンゼルスにも支部を持っていることからも、海外での人気が窺えますね。
日本へ直接買い付けに来るブリーダーも増えているそうです。
秋田犬を飼育している海外の有名人やセレブは多く、今後も人気は広まっていくでしょう。
しかしその反面、雑種や偽物が秋田犬として高値で販売されたり、血統書の偽造などが行われるという残念なケースも増えているます。
秋田犬ってどんな性格?
秋田犬の性格でまず特筆すべきは、何と言っても忠誠心の高さです。
感受性が高く賢いので、飼い主にはとても従順で、一度でも主人だと認めた相手には、まさにハチ公のようにどこまでも付き従います。
その一方でよそ者には警戒心がとても強く、知らない人や犬に対しては激しく吠えたり威嚇をすることも。
そのため、番犬としては優秀ですが、狩猟犬や闘犬として活躍してきた歴史があるため、噛む力も闘争本能も強く、きちんとしたしつけは必須となります。
一部の自治体では「特定犬(檻の中での飼育が義務化されている)」に指定されていることもあるので、飼育の際はきちんと確認をしておくようにしてください。
しつけ方法
基本的に秋田犬はしつけがしにくい犬種だと言われており、何かに夢中になると本能的に命令を聞かずに行動してしまうこともあります。
また「主人だと認めた相手には高い忠誠心」ということは、裏を返せば「主人だと認めなければ言うことは聞かない」という頑固さにもつながります。
実は犬が原因となって起こった事故の中でも、秋田犬が原因となっているケースが多いという調査もあるほど。
万が一にも事故を起こさないためには、まず初めにリーダーは誰なのかというのを徹底的に刷り込んでおかなければなりません。
散歩のときには前を歩かせない、食事の順番を守らせる、場所や物の取り合いでは絶対に譲らない等、少し可哀相に思えるかもしれませんが、しつけを行う上でとても大事なことです。
大げさなようですが、少しでもなぁなぁに甘やかして「自分の方が偉い」と思わせてしまうと、手に負えない問題犬となってしまいます。
他の犬種同様、大きくなるにつれて独立心は強くなりしつけが難しくなるので、できれば生後2~3か月頃の子犬の内から、しっかりとしつけを行いましょう。
初心者には飼育は難しい?
上にも書いたように、秋田犬はしつけが難しい部類に入ります。
しつけも覚えてしまいさえすればきちんと守るのですが、覚えさせるまでが大変なのです。
一度しつけを失敗してしまうとリカバリーは難しいため、初心者には向いていない犬種でもあります。
また、運動量が多く最低でも一日2回、各一時間以上の散歩が必要であり、体が大きく力も強いためしっかりとしたコントロールが不可欠…ということからも、やはり犬のしつけに関する知識を持っていない人が飼うのはリスクは大きくなります。
もちろん、個体差や相性もあるので、初心者では絶対に飼えない!というわけではありません。
もしも初心者だけど秋田犬を飼いたい!という場合には、しっかりと秋田犬の性質について学び、環境を整え、かつ専門のトレーナーさんなどに指導を仰ぐのがベストです。
被毛の特徴
秋田犬は寒い地域の犬なので、しっかりとしたダブルコートに包まれています。
毛の長さは「ハチ公」のような短毛種と、「わさお」のような長毛種の2種。
どちらにしても毛が密に生えているので、フカフカとした手触りです。
そのため寒さにはとても強いですが、暑さには若干弱い傾向があるので夏は注意してください。
被毛のカラーバリエーションは、白・黒・赤・虎・斑・胡麻の6種類。
カラーや毛の長さによっては、全く違う犬のように見えます。
この中でも黒は現存せず、胡麻はほぼ絶滅状態と言われておりかなりの希少種です。
抜け毛
秋田犬はダブルコートで毛の量が多いため、必然的に抜け毛の量も多くなります。
特に春と秋の換毛期にはどんどん毛が抜けます。
短い毛の場合は絨毯やクッションなどに刺さってしまい、掃除機や洗濯ではなかなか取れません。
そこで、日頃からブラッシングをして毛のケアをしておきましょう。
換毛期には1日に2~3回、それ以外の時期でも3~4日に1回はブラッシングをしてあげてください。
基本的にトリミングが必要な犬種ではありませんが、足裏が伸びて気になる場合には、カットしてあげましょう。
大きさ
体高:60~70㎝
体重:25~50kg
数値で見ても分かる通り、秋田犬は大型犬です。
大きい個体になると、60kg近くの「超大型犬」まで育つこともあるので、飼育の際にはそのことをしっかり頭に入れておきましょう。
また成長が速く、1年で子犬の時の7~8倍まで大きくなります。
値段
スタンダードなカラー(赤、白、虎)では、カラーによる価格差はほとんどありません。
ただし、希少なカラーや優秀な血統の個体になると、50万円前後の価格で取引されています。
購入方法
秋田犬は人気犬種ではありますが、まだまだ純血種の数は少ないため、どこのペットショップでも常に見かけるということはありません。
また、まれに純血種ではないものが秋田犬として販売されていることもあります。
もちろん正当に取り扱っているペットショップもありますが、より確実なのはブリーダーから譲り受ける方法でしょう。
ブリーダーからの購入はそのルーツをしっかりと確認できたり、しつけや飼い方について詳しいアドバイスをもらえたり、長い時間親と過ごせることで子犬のストレスを減らし社会性も身につけられるというメリットがあります。
里親募集という手もありますが、秋田犬は成長してからのしつけが難しいので、よほどの自信がない限りはあまりお勧めできません。
まとめ
主人だと認めた相手にはどこまでも忠誠を尽くす秋田犬。
そして寡黙ながらもいざという時には激しい一面も見せる様子は、まるで「侍」ですね。
まさに日本を代表するにふさわしい犬種です。
日本犬ならではの魅力がたっぷりと詰まった秋田犬ですから、ぜひ多くの方にその魅力を知ってもらえたらと思います。
ただし、飼育に関しては安易におすすめできるわけではありませんので、しっかりとした知識と覚悟と責任感を持った上で飼育に臨んでください。